2005年11月

2005年11月23日

NY’90:マディソン・スクエア・ガーデンのダフ屋



No.23
Check it out.
ちょっと見てみろよ(軽いニュアンス)
ほらほら、こっちこっち(道端での商売)
スッゲーあれ、ほら(強いニュアンス)
{映画など}見た方がいいぜ。


cf. You should check it out.

春風をなびかせて、颯爽と歩いている女性をみて、
「おいおい、あの娘いかしてるゾ!」というニュアンスから、
新聞のアパートアパート探し欄で気に入った物件を見つけて、
「これ見てよ」というニュアンス。
さらには、ダフ屋がチケットを売るときの、
心なし後ろめたさを含意したような、
「ほらほら、こっちこっち。ちょっとちょっと、いいのあるよ」
等々…。
当然、祭りの出店の、
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」も、
Hi, check it out, check it out!



帰還兵



マディソン・スクエア・ガーデンのダフ屋
私が住んでいたアパートは、
マディソン・スクエア・ガーデンまで徒歩3分ほどのところに位置していた。
ちなみに、ホームレスの方々の最大の溜り場の一つになっているペン・ステーション(Penn Station)は、マディソン・スクエア・ガーデンの地下にどどーんと広がっている。

昼といわず夜といわず、
床に寝転がって人生を考えている人や、
大きなバッグを抱えてキョロキョロしている観光客を目ざとく見つけては、
タクシーを捕まえてきて強引に1ドル紙幣を「獲得」していく連中まで、
その種類は豊富だ。

すこしでもボーッと隙を見せようものなら、すぐさま、
左右の肩を前後にゆすりながら、
一歩一歩伸びをするような独特の歩調で近づいてくる。
「よう、タクシーいるの?」
…大きなお世話だ!
行き成り背後から、ヌーッと現れる奴もいる。
何はどうあれ、キビキビと、
それでいて注意深く歩くことが肝要である。

人がたくさん出入りするところには、必ず彼らのような「俺のやりたいようにやるさ」的な連中が、影のように集まっている。
さらに、
マディソン・スクエア・ガーデンで、
アイスホッケーやバスケットボールなどの試合があるときには、
ダフ屋がこれに加わってくるのだから、
自然、歩調も速くなる。

年末のある日、ニューヨークに宝石の勉強に来ている友人のヨシ君に、
「アイスホッケーを観にいきませんか」
と誘われた。
彼は大学時代にアイスホッケー部にいて、主将までつとめた男だ。



MSGとキャブ4




マディソン・スクエア・ガーデンまで徒歩3分のところに住んでいるにもかかわらず、
それまで一度も中に足を踏み入れたことがなかったので、
ホッケー云々というよりも、
「なかは、どーなっているのだろう?」的な、
子どもの好奇心そのもので出かけてみた。

だが、窓口にいってみると当然のようにチケットは売り切れ。
シーズン開幕から絶好調のニューヨーク・レンジャース(Rengers)のカードは、一ヶ月で売り切れたという。
すると、
「大丈夫、ダフ屋がいますから」とヨシ君。
彼の後についてマディソン・スクエア・ガーデン沿いの34th St.にいってみた。

いるいる!
東京でいうなら武道館の周りに集まっているダフ屋のようなものだ。
口々に、
Check it out. Check it out! (ほらほら、みてみて)
と元気のよくない、呟くような声で道行く人たちに声を掛けている。
警察官があちこちにいるので、彼らも堂々と声をあげられないようだ。

ヨシ君とふたりで、その中のひとりに声を掛けてみた。
するとどうだろう、
あっという間に4、5人のダフ屋が我々のまわりに寄ってきた。それぞれの手には何枚ものチケットが握られている。
「どんな席がいいんだ」、「二人だな」
と、それぞれが先を急ぐかのように、自分の持っているチケットを差し出してくる。

我々はその中から、一番よさそうな席のチケットを選んだ。
一枚25ドル…。果たして高いのか、安いのか。

そう思い、窓口にいって実際の値段を見て驚いた。
「A席、25ドル」
正規の料金と一緒だった。
「奴ら、いったい何で儲けてるんだ?」
と思ったが、考えるのをよした。
You should check it up.
ダフ屋も要チェックだ。

(飯村和彦)




newyork01double at 09:50|PermalinkComments(8) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月22日

東京story:「ダブル」秘話〜アルバムの意味〜



深夜、突然クローゼットの中をかき混ぜるはめになった。
読みたい資料がなかなか見つからない。
書類は「横に、横に」並べるように保管すべきなのに、
ついつい「上へ、上へ」積み上げてしまう。
これだから、いくら時間があっても追いつかないのだ。

その上、
追い討ちをかけるように、古いアルバムが目に入ったりするからいけない。
誰だって作業を中断するだろう、この場合…。

仕方なく、布地のカバーを開いてみた。で、またボーッと考える。

ある年齢になって写真を眺めると、
幼い頃の自分が、どんな顔で何をしていたのか…を楽しむのではなく、
幼い自分と一緒に写っている、
父や母の「若い姿」に目を奪われるようになんだなあ…と。



息子とベンダー2



ということは、つまり、将来確実に、
「あれ、父さん若いなあ」とか、
「母さん、イケてたね」
というような会話を、息子と娘がするということだ。

おまけに、そんな言葉を交わしている彼らのひざの上には、
おのおのの息子や娘がのっていることだろう。
「これがグランパで、これがグランマ?」



娘とヘリ2



いやはや、まいったなあ。
つまり、子どもたちと一緒に写真を撮るときは、
シャン!としていないといけない。そういうことか?
違うな、そんな親を自分が見たいとは思わないから。

(飯村和彦)





newyork01double at 04:03|PermalinkComments(21) 家族/ 子育て | ダブル

2005年11月21日

NY’90:空きビン落としの当り屋



No.22
scam (=con)
あざとい行為・手口。セコイ金儲けをする輩らの汚い行為。
詐欺師の手口


Ex. What’s a scam! I hate them.

42nd St.あたりで故意にぶつかってきては、
手に持っていた「空きビン」を落とし、
その弁償代として観光客から、$20を脅しとっていくような奴。
さらには、株の情報を顧客にリークして金を儲けるような奴のことまで、ともかく、人を騙してセコイ金を儲ける奴の手口。
日本でいえば、かつてのリクルート事件の江副社長や、
彼から未公開株を譲渡されて金を儲けたとされる大勲位・中曽根元総理をはじめ、
株を受け取った一連の国会議員たちの汚い行為もscam。



街角



空きビン落としの当り屋
雨上がりの夕方、
といってもまだ完全に明るく、通りをいく人の数も多い時間のこと。
34th St.から、我がアパートのあった30th St.に向かって8th Ave.を歩いていた。

どデカイ、ロマネスク調のアメリカ中央郵便局を右手に見ながら、
マディソン・スクエア・ガーデンの前を通り、30th St.の角にきたとき、
行き成り私の肩にぶつかってくる黒人がいた。

「アッ」と思った瞬間、
「ガシャッ!」という鈍い音が背後から聞こえた。

当り屋の存在については、ニューヨークに住む知人からすでに聞いていたので、その対処法として教えられた通り、
完全に無視して歩き続けた。
立ち止まって言葉を交わしたら泥沼にはまっていくという。

が、そのときは勝手が違った。
「Excuse me, excuse me, Sir!」(ちょっとちょっと、ダンナ!)
と執拗にくいさがってきて、あきらめる気配がない。
あげく、私の前に立ちふさがり、
割れたウォッカのビンを差し出してきた。

「You broke my stuff, please give me $20.」
(俺のもの壊したんだか、ら20ドルよこせ)
と白目をむいて主張していた。
人を脅しては金を巻き上げていく、典型的なタイプの男。
こんな野郎のいいなりになってたまるか!
と、私の心に「小さな」敵対心が沸いた。

「どうせ空きビンだったんだろ。もしウォッカが入っていたとしても、お前がワザトぶつかってきたのを俺は知ってる。俺に責任はない」
と言葉を並べた。
ところが、男はそれでも堂々とウソをまくしたて、
ついには、折りたたんだ傘で私の胸を突いてきた。

怖い。正直、そう思った。
すると、男が道路の反対側に視線を投げた。
なんと、仲間らしき男が2人、こちらを見ていた。
これまた見るからにいい加減そうな奴らである。
正直、まいったなあと思ったのだが、
ここで「ハイ、そうですか」と、
金を差し出すのもしゃくなので、一つ提案をしてみた。

「わかった、弁償しよう。でも20ドルは払えない。ぶつかったのにはお前にも責任がある。だから半分のい10ドルだけ弁償してやる。近くに酒屋があるから、そこでウォッカのハーフボトルを買ってやるよ」



パーキングメーター2



その黒人が欲しいのは現金で酒ではない。
最後の意地悪だ。
と、男の顔に野卑な笑いが浮かび、その途端、強力な力で私の首根っこを掴んできた。
さすがにそこまでくると先が怖い。
仕方なく、
ポケットから、くちゃくちゃの5ドル紙幣を2枚だして男に渡した。

その後、アパートに戻った私が、強烈な腹痛に襲われたのはいうまでもない。かなり緊張して男とやりあっていたために、胃が痙攣(けいれん)したのだ。
ベッドでのた打ち回りながら、
私はふたつの感情を味わうことになる。

「10ドル値切ってやった」という微かな満足感に近いものと、
「それでも10ドル取られた」という悔しさと。
いづれにしても、
What’s a scam! I hate them. (ったく、汚ったねーな! ふざけんなよ)

(飯村和彦)





newyork01double at 10:50|PermalinkComments(15) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月20日

週末だから!:犬とネコ「スパイがいるゾ!」



週末だから…ということで、
「愉快なペンギン」、
「胎児の足跡?」、
に続く、妻の知人からメールされてきた痛快映像。



猫と犬



「スパイが一匹!?」
まあ、答えは簡単だが、簡単な分おかしい。

とまれ、
「犬」と「猫」の違いとはなんだろう。
見ればすぐに「これは犬」、「あれは猫」、
と判別できる私たちだが、
それもこれも、
周りの人たちから、
「あれは猫で、これは犬だよ」
と、子どもの頃から教え込まれた「結果」のようだ。
教え込まれなければ、どう思うのだろう?
もしかすると、その方が良かったのかも…と考える時もなくはない。

そうはいっても、「犬」と「猫」の違いってナンダ?
改めて考えると面白い。
もちろん、生物学的な差異があるのだろうが…。


(飯村和彦)





newyork01double at 10:50|PermalinkComments(16) 週末だから! | 家族/ 子育て

2005年11月19日

NY’90:La Mama のママと抱き合って



No.21
Give me five! (=Slap me five!)
やったぜ!

“心の中でシンバルがなった”ときのよう。
何かを一生懸命やり、それが達成できたとき。
または、スロットマシンでジャックポットなんて具合に、
ラッキーな出来事が自分に起こった。
そんな時、友人と手をパチン、“Give me five!”



east village2



La Mama のママと抱き合って!
ロケでダウンタウンはイースト・ヴィレッジ、
「La Mama Theater」にいった時のこと。
一般的には、off-off-Broadwayと呼ばれるこの舞台、
ギンギンぎらぎらのBroadwayミュージカルとはかなり趣を異にする、
ちっちゃな舞台だ。

「俺たちはこーだぜ!」的に、
何をやってもいいこのla Mamaには、
世界中から若い舞台人が集まってくる。
1970年には寺山修二が、
1972年には東京キッドブラザースがここで舞台を行っているので、
ちょっと芝居を齧ったことのある方々ならご存知のはず。
残念ながら、私は知らなかったのだが…。

6階建ての古いビル。
ありがちなネオンの看板などない。
La Mamaとマジックで書かれた紙が、1階の赤い鉄の扉に貼ってあるだけ。
「知っている奴だけが来てくれればいい」
という、少々人を突き放したようなポリシーが感じられる。

この劇場は1961年にオープンしてから、
今のイースト・ヴィレッジに移るまで、5回も場所を変えている。
ニューヨークにも当然、日本でいう建築基準法のようなものがあり、防火対策などの面から消防署が目を光らせている。

ところが、
ニューヨークにある多くのディスコや劇場が、
不法なものだったりする。
火事にでもなったらひとたまりもないような建物の地下がディスコであったり、劇場だったり。
事実、ブロンクスにあったナイトクラブは、火事で87人もの犠牲者をだしている。この火事では、クラブが不法だった上に、クレージーな客が店内に火をつけたというからたまらない。

La Mama 劇場も、消防署の摘発を受けては場所を変え、やっと現在の場所に落ち着いたという訳だ。

オーナーのEllen Stuartさんに会った。
人懐こい目をした、小柄な黒人女性。
丁寧に結った銀色の髪が、とっても印象的な彼女は、
“演劇界の母”として、みんなに慕われている。
70歳(1990年当時)。
「腰が痛い」とぼやいてはいたが、なんの、準備中の舞台に上がってきては、若い連中とわいわいやっている。

デザイナーを夢見て、60ドル片手にシカゴからニューヨークにやってきたという彼女。
その手は信じられないほど柔らかく、
成功した今でも時々、その手で舞台衣装のデザインをしている。

さて、
次は役者に挨拶をすべく5階の事務室へ。
机が10つほどの部屋で、5、6人のスタッフが作業をしていた。
カメラがそれらしい男を捉える。
今回の芝居は、
60年代の黒人運動家、Frederic Douglasを扱った一人芝居だと聞いていた。
「彼が役者のRoger Smithか…」
と思ってみていると、突然、別の男がこちらを向いた。

ペンキで汚れたつなぎの服を着たひげ面の男。
今の今まで、必死で電話をかけまくっていた男だった。
Hi, how’re you?!
と彼。
舞台にひとりでも多くの客を集めるために、知り合いみんなに電話をしていたところだといった。
背が高く、よく見ると役者らしい風貌(?)をしている。



war stop



午後9時。
Ellenさんが振り鳴らすベルで幕が開く。
Smithさんの電話攻撃が功を奏したのか、客席は一杯。
TVモニターやスライドを駆使した、彼の一人芝居が始まった。
ところが、この舞台はほとんどが彼の一人喋り。
セリフだらけの舞台は、まだまだ自分には荷が重すぎた。
だが、彼の表情を見ているだけでも興味深く、まさにあっという間に舞台は終了。
そして大喝采。

舞台を降りて小さな楽屋に引き上げてきたSmithさん。
顔中、一杯の汗。
Ellenさんが顔をだす。
そして、
Give me five!
手をパチンと合わせて、ふたり抱き合った。

残念ながら私には彼の舞台は理解できなかった。
「どうだった?」
とカメラマンの海野くんに聞いてみた。
「よく分かりませんけど、Smithさんの満足そうな表情をみていたら、それだけで良かったんだなあ、と思ってしまいました」
う〜む。
で、改めてSmithさんの顔を覗き込んだ。
“間違いなく”ひげ面の役者の顔があった。

(飯村和彦)






newyork01double at 11:52|PermalinkComments(9) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月18日

東京story:ダブル秘話〜胸の中のライオン〜



空気が乾燥してきた為だろう、このところ、
子供たちが、「ゴホゴホ」を繰り返している。
そろそろ加湿器の助けが必要な季節だ。

彼らの「ゴホゴホ」を耳にするたびに、思い出すことがある。
息子がまだ、1歳半ぐらいの時のある彼の言葉だ。

確か、寒さの厳しい12月末の晩ことだったと思う。
その日、息子は風邪を少しこじらせたらしく、
午前中から、切れの悪い「ゴホゴホ」を繰り返していたという。
これは、妻からの報告。
案の定、夕方になるとその「ゴホゴホ」はさらに悪化し、
私が帰宅したころには、
聞いていて不安になるほど、「湿った音」になっていた。



息子と米粒



熱は38度弱。
とはいっても息子自身は、時に咳き込みながらも、
普段と同じように積み木を積んでは、ミニカーをぶつけて遊んでいた。
妻によると、
電話で医師の判断を仰いだところ、
「一晩様子をみて、咳がもっとひどくなる様だったら、
朝一番に病院に来るように」とのことだったらしい。

そして翌朝、明け方近く。
息子の湿った咳は、「ゴホゴホ」ではなく、
「ゼーゼー、ゴーゴー」という嫌な音に変質した。
小さな胸に耳を当ててみると、
中からは、風が舞っているような鈍い音が聞こえてきた。
それが、息を吸うたびに繰り返えされる。

「病院へ行こう」
そう判断して、息子を抱きあげようとしたときだった。
「ここにライオンがいるみたい」
と、彼がいった。
息子には、胸の中で渦巻く音が、
ライオンのうなり声に聞こえていたらしい。
そういうなり息子は、ニコッと笑った。
その笑顔が、
私たち夫婦をどれだけ安心させてくれたことだろう。

結局、病院で診察結果は、気管支炎の初期症状。
薬を飲ませると、その日の午後には症状も治まった。
しかし、こうも考える。
息子の胸の中からライオンを退治したのは、
薬ではなく、彼自身じゃなかったのかと。
それぐらい、息子は落ち着いていたのだ。

(飯村和彦)






newyork01double at 12:20|PermalinkComments(24) 家族/ 子育て | ダブル

2005年11月17日

NY’90:詩の朗読会〜Dead Poets Society〜



No.20
Keep in touch.
また連絡してネ
連絡を取り合おう


仕事上でも、週末のパーティででも、
それまで知らなかった人に出会い、
気が合ったとか、価値観が一致したとか、
そんなとき、別れ際に、
We should keep in touch.(連絡を取り合いましょう)
また、軽い感じの別れ際の挨拶に、
「また、電話でもしてネ」
という意味合いで使われる。



映画誌



詩の朗読会〜Dead Poets Society〜
ロビン・ウィリアムスが主演した、
「Dead Poets Society」という映画があった。
日本では、「今を生きる」なんていう、
戦前の“終身”教育用フィルムのようなタイトルになっていたが、
素敵な映画だった。

生きた「詩」、
形にとらわれない自由な自己表現・感情表現としての「詩」を通して、
教師(ロビン・ウィリアムス)が生徒に、
本来的な人間の生き方とは何か、と教えてはじめる。
そんな中、芝居に心惹かれていた一人の生徒が、
“夢の実現”と、
社会的地位のある人間になって欲しいという、
“親の期待と圧力”に悩み、自殺……。

地味ながら、訴える内容だった。
主演したロビン・ウィリアムスは、映画専門誌PREMIEREのインタビューで、
「ファーストフードを毎日食べ過ぎているような人たちに見てほしい映画だ」
と答えていた。
迂遠した表現だったが、分かるような気がしたものである。

ところで、
ニューヨークには数多くの「詩」のグループがある。
それぞれ、夜の教会や劇場などで、
毎週、詩の朗読会を行なっていて、これがなかなかの人気。

“詩の朗読”などと聞くと、
どこか暗い人たちの、退屈な自己満足の発表会と思われがちだが、
それがそうでもないのだ。
詩を聞きにくる人も、詩を読む“詩人”たちも、
明るく、闊達な人が多く、
大抵の場合、それなりに人も集まる。

東京などでは想像しにくい現象だが、
ニューヨークでは、ひとつの文化として認知されているようだ。
…とここまで書いて、
今の日本での「ブログ」人気を考えると、
日本にも似たような土壌があったのかも知れない。
…訂正。



ゲート



さて、話をニューヨークに戻す。
あるとき、そんな詩の朗読会の一つを取材した。
会場は、ダウンタウンにあるSt. Mark’s という教会。
十数人の詩人の朗読、訪れた人たちのコメントなどを撮り終えて、
さて、そろそろ帰ろうか…というとき、
一人の少女が私たちのもとに駆け寄ってきた。

「私、日本で生まれたんです。
父が空軍のパイロットだったので、2歳まで所沢に住んでいました」

キラキラした目が印象的な、18歳ぐらいの金髪の少女。
朗読会では、「Bed」というタイトルの短い詩を朗読していた彼女は、
会を主催していたグループのスタッフでもあるらしく、
胸にパンフレットを抱えていた。

「どうでした?」と彼女。
「良かったよ」と私たち。
本当のことを言えば、難解な詩も多く、
理解できないものも少なくなかったのだが、そこは調子のいい日本人である。

We should keep in touch.
彼女は別れ際にそういった。
Sure!(もちろん!)…これまた調子がいい。
以降、しばららくの間、
“毎週月曜日の教会通い”が続いたのは言うまでもない。

(飯村和彦)






newyork01double at 11:25|PermalinkComments(9) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月16日

東京story:黒田さんご夫妻の結婚披露宴



黒田慶樹さんと清子さんのご結婚も、大きなトラブルもなく終了。
強いてあげれば、
NHKが、協定を無視(…そうとしか考えられない)して、
皇居からでる清子さんの様子をヘリコプラーから撮影したぐらい。
懲りないというか、それ以上に「驕り」を感じる。

さて、時間をぐぐぐと過去に戻してみよう。
私の手元に、皇太子さまがご結婚なされた時、
ニューヨークタイムスの一面を撮影した写真がある。
あの時は、アメリカでも詳細に報道された。



皇太子結婚時タイム



皇太子妃のキャリアにも注目が集まり、
私の知人なども、「ご学友」として、
皇太子妃の学生時代の逸話などを披露していたのを思い出す。
同世代ということも手伝い、
日本の皇室に「新しい風」を感じたものだ。

一方、きのうの黒田さん夫妻の結婚披露宴には、
見慣れた光景ゆえの「新鮮さ」があった。

私たちが知っているスタイルの結婚披露宴。
幾つかの丸テーブルが並び、
そのうちの一つに、新婦の「ご両親」がにこやかに着席している。
そのご両親が、昨晩の場合は、たまたま、
天皇皇后両陛下であったのだ。

この感覚は、不思議と心を和ませもした。
もしかすると、似たような感想をもった方も多いのでは?

(飯村和彦)





newyork01double at 12:15|PermalinkComments(13) 東京story | 家族/ 子育て

2005年11月15日

NY’90:サンドウィッチとバングラディシュ人



No.19
Keep your chin up!
まだ頑張ってね!
へこたれちゃダメだぞ!


訳あって悲しみに打ちひしがれているとか、
あることに何度も何度もトライしても、なかなか上手くいかない。
そんな人に対して、
「(大変だろうけど)まだ、頑張って!」
「へこたれちゃダメだぞ!」
と、励ましたり、元気づけたりする場合の表現。



エンパイアビル



サンドウィッチとバングラディシュ人
34丁目のMacy’sデパートの近くに、
「Blimpie」という名前のサンドウィッチ店があった。
安くて、ボリュームのあるサンドを売っているチェーン店で、
24時間営業。
酒を飲んだ後の、あのなんとも表現しにくい空腹感を満たすために、
頻繁に利用していた。

さて、
ニューヨークに住み始めて、
まだひと月も経っていなかったある日の夕方。
そのBlimpieで、ペッパーステーキサンドを買っていた時のこと。
店員のアジア系の男性に、突然話しかけられた。

「きみは中国人?それとも日本人か?」
と。それで、
「俺は日本人だよ」
と答えると、彼は、
非常に癖のある英語で、私になにか頼みごとをはじめた。

注意深く聞いていると、彼の言葉の中に、
「もしもし」
という日本語がはいっていて、
一所懸命電話をかける真似をしているのが分かった。

「親友が今、日本で働いているんだ。
それで、今晩、電話をすることになっているんだが、
俺は全然、日本語ができない。
だから、俺の代わりに電話をかけて、
友達を電話口まで呼び出してくれないか」

それが彼の頼みごとだった。
さらに、
「今晩11時に、あの電話のところに来てくれ」
といって、道端にあった公衆電話の方を指差した。

今にして思えば、難しい頼みごとでもないのだが、
まだニューヨーク生活の日も浅く、
色々なタイプの人たちと接する機会も、そう多くなかった時期のこと、
一瞬、考えてしまった。
「変なヤツだったらどうしよう」と。

その公衆電話があったのは、自分のアパートから、
歩いて5分とかからないところなのだが、
治安はといえば、決して良くない。
一応、「いいよ」とは答えたものの、いざ、アパートに戻ってしまうと、
夜、改めて外に出て行くのには少し抵抗があった。



ブリンピー



数時間後、しばし逡巡したあと、
意を決して(…大袈裟だが真実)待ち合わせの場所にいったのが、
夜11時04分。
この4分遅れというのが、そのときの私の心境をすべて物語っている。

するとどうだろう、
彼は、既に公衆電話の受話器を手にして立っている。
驚いた。
と同時に、「あー、きて良かった」
と心底思った。

もし、ぐずぐずしたまま、「えーい、止めておこう」などと思い、
その場に来ていなかったらどんなことになったのか。
バングラディシュ人の青年は、
「日本人はウソつきた!」
と心に刻み込むであろうし、
その後、
酔っ払って夜中にサンドを買いにいくこともできなくなったかもしれない。

運よく、日本で働く彼の親友、デージーにも電話が繋がった。
そのときの彼の表情の嬉しそうだったこと…。
デージーは、埼玉の鋳物工場で働いていた。
あとで聞いてみると、彼が真面目に仕事をするので、
その“御褒美”に、
店のオーナーが日本に電話させてくれたのだという。

バングラディッシュ人の青年は、
アメリカで、“グリンカード(永住権)”を取得することが夢だといった。
そのために彼は、
毎日、夕方5時から翌朝5時まで働いていた。
カンバレ!
Keep your chin up!!!!

(飯村和彦)





newyork01double at 11:26|PermalinkComments(13) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月14日

東京story:図書館からの葉書




ダブル表紙



茨城県立図書館から、「ダブル」を蔵書に加える、
との葉書きが舞い込んだ!
これ、私にとっては最高に嬉しいこと。

著者としては、勿論一人でも多くの方に購入して欲しいのですが、
そうはいっても、“お金を出してまで…”という買う側の気持ちも分かります。
私自身、本を一冊買うには、それなりの「決断」を要していますので。

そこで図書館が活躍してくれるのです。
誰もが、気軽に、気になった本を手にできる図書館は、
読者の強い味方であり、私のような著者の「保護者」でもあるのです。
おまけに、最近の図書館は結構充実しています。

みなさん、
本を買う前に、一度と図書館を有効利用することをお勧めします!
以上、報告でした。あしからず。


(飯村和彦)





newyork01double at 21:08|PermalinkComments(11) ダブル | 気になるBOOKs

NY’90:House Pest(家に付いた“害虫”)



No.18
Pain in the neck
厄介もの。邪魔者。
悩みの種。
わずらわしいもの(人)


Ex:He is such a pain in the nech.

例えばある男性が、会社でピカイチの女性を一方的に好きになったとする。
そんな彼のことだから、
たった一度でも彼女にやさしい言葉なんかをかけられようものなら、
すっかりその気になり、
彼女にまとわり付いては親切の押し売りの数々。
人間ができている彼女は、
「もう、いい加減にして欲しい」
と思いながらも、顔には出さない。
傍で見ていて可愛そうなほど…。
彼女にとっては、そんな男性が“pain in the neck”。
無論、行動がエスカレートしてストーカーになると、
もう、これは立派な犯罪。



レターマン



House Pest(家に付いた“害虫”)
David Letterman(デビット・レターマン)という男がいる。
米国CBSテレビの夜の人気番組「Late Show」のホスト。
もともとは売れないコメディアンだった彼なのだが、
今や超がつく有名人。
彼がNBCテレビからCBSテレビに番組ごと移籍したときには、
CBSの株価がポン!と上がったほどだ。

彼の番組スタイルは、角界の人気者から街のお調子者までを、
ゲストに呼んではトークを進める“トークショー”なのだが、
あるときは、
全米No.1のプロボーラーに、テレビ局の廊下で金魚鉢を割らせたり、
スタジオセットのテーブルの上に横になって、
献血をしながら番組を行ったり…。

その型破りの番組企画に、
彼自身のギャグのセンスもあいまって、人気はいまだに衰えない。

彼がまだNBCで番組をやっている頃のことだった。
三菱地所によるロックフェラー・センターの買収が発表された晩の、
レターマンの番組オープニングコメントは忘れられない。

Live from New York, a subsidiary of Mitsubishi Corporation.
(三菱の子会社になってしまった“ニューヨーク市”からの生放送)

機を見るに敏というか、
当時、彼の番組は、
ロックフェラー・センターにあったNBCのスタジオを使用していた。
ティファニーをはじめ、
ニューヨークのシンボルを買い漁っていた、
日本企業への痛烈な皮肉だった。

あるとき、そんなレターマンが、
法廷に座っている姿がテレビニュースに映し出された。
なんだろう、と思いきや、
彼の家に不法侵入した熱狂的な女性ファンとの裁判だった。

有名人が、
訳の分からぬファンに悩まされるのは何処の国も一緒だが、
この女性ファンの場合、常軌を逸していた。
名前は、マーガレット。
レターマンの家のベッドルームに忍び込んで勝手にベッドで眠ったり、
家の中をうろついたりしたかどで逮捕されていた。

ところがこの女性は、
逮捕される2日前に7ヶ月の刑期を終えて出所してきたばかり。
いわばレターマン宅への不法侵入の“常連”で、
2年間に6回も、刑務所とレターマンの家を行ったりきたり。
文字通りのストーカーだったのだ。

レターマンにとっては、
自分の家に取り付いたpest(ペスト)のような存在だ。
…ちなみにここでの「pest」は、「害を及ぼす人間」の意味。

で…、
裁判所がこの“House Pest”に言い渡した判決は、
1年間の刑務所暮らし。
住居不法侵入等の軽犯罪にたいする量刑としては最も重いものだというが、
1年後、
彼女がまた、レターマン宅に忍び込んでくるのは容易に想像できる。

判決の日、
レターマンは裁判官に、女性との関係を以下のように説明していた。
「彼女が地球上に存在していたことを初めて発見したのは、彼女が我が家に侵入したときだった」
その口調と表現は、
自宅でとんでもない病原菌を発見してしまった科学者のようであり、
ニュースでその場面を見ていて思わず苦笑してしまった。

She is such a pain in the neck.



7th Av.



翻って日本。
桶川ストーカー事件以降、いわゆる「ストーカー法」ができたが、
いまだに、「警察に助けを求めたが、なにもしてくれなかった」
という事例があとを絶たない。
“事件後”の警察側の言い分は、いつも同じだ。
「訴えに事件性が認められなかった」
けれども、そこには確かに「事件」が存在していたのだ。
でなければ、結果的に、
どうして多くの犠牲者が生まれてくるのか?!

捜査関連書類の“改ざん”はできても、
改ざんする理由は、「分からない」らしい。

(飯村和彦)





newyork01double at 10:44|PermalinkComments(9) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月13日

東京story:猫の話「日常1」



このところ、めっきり「知恵」がついてきたミルキー。
身の回りの事象が気になるらしい。



ベランダ



朝一番にすることは、ベランダのチェック。
彼女は、その周辺を自分のテリトリーだと考えている。

熱帯魚

熱帯魚も興味の対象だ。
ソファーに上って、同じ目線で観察する。
だが、「まだ」手をだす方法を知らない。



カメ



ところが、カメに対しては若干アクティブ。
隙を見つけては、軽くタッチ。
活発に動かないところが、逆に気になるようだ。



カーテン



リビングを見渡せる彼女専用のはしご。
これは息子と私が作ったものだ。
高いところが好きな猫らしく、「日常」に飽きると上っている。

だが、
ときどき、彼女に見下(おろ)ろされるていると、
「見下(くだ)されている」
と感じてしまう私は、まだ、人間が小さいようだ。

(飯村和彦)






newyork01double at 10:16|PermalinkComments(14) 家族/ 子育て | 猫の話

2005年11月12日

東京story:チワワ誘拐!




チワワ誘拐記事



本日、11月12日付けの朝日新聞だ。
つい先日、“虐待・猫”と題し、
ある荒んだ時期のニューヨークで、
ペット泥棒が横行し、
それがペットショップや研究機関に転売されていたという話をした。

そこに、今日の朝日の記事。
「空き巣のついで?」
「転売目的?」
「高いから?」
「可愛いから?」
「連続犯?」
「関連なし?」

記事は、「?」に終始しているが、
チワワが「誘拐」された事実だけは動かない。

さらに、
「血統書付きの子犬なら数十万円で取引されるが、
成犬だと買い手はまずない」
という、ペットショップ関係者のコメントを載せている。
実はこのコメントが問題だ。
現実に起きていることを、曖昧にしかねない。

盗んだ人間が、「ついで」にチワワも持ち去ったのであれば、
なにも、「数十万円」もの金額を欲していないということ。
裏返せば、
たとえ「数十万円」にならずとも、
誰かが「それなり」の値段で買ってくれさえすれば、
盗んだ人間は、満足する。

ましてや、成犬のチワワを安く仕入れ、
そのチワワを「格安」で販売するような仕組みを、
何者か(又は組織)が作っているとすれば、
盗んだチワワは、いとも簡単に換金されていく。

表面化している事象の背後に何があるのか。
その可能性の一つを、コメントひとつで消してしまうと、
問題解決から遠のいてしまう。

そこまで考えてやらないと、
「家族の一員」を失った家族が浮かばれない。
そう思いませんか?


(飯村和彦)


newyork01double at 11:56|PermalinkComments(2) 東京story | 家族/ 子育て

2005年11月11日

NY’90:Motherという名の男



No.17
passed out
なーんにも覚えていない!
(飲みすぎて)完全にダウンした


ex: I passed out.

きのうの晩のことは、「なーんにも覚えていない」
という位、ブンブン酒を飲んでしまったときの表現。
朝、目覚めたとき、
頭がグルングルン回っているような時も、
I passed out yesterday. (=I hung over yesterday.)



仮設?2



Motherという名の男
“飲んベぇは、やっこ豆腐にさも似たり。はじめ四角で、あとはぐじゅぐじゅ”
“酒は飲むもの飲まれちゃならぬ。何はなくとも気で酔える”
正確かどうか定ではないけれど、よく口にしている愛すべき言葉。

ともかく、飲む。
アルコールであれば種類は問わない。

ジャック・ダニエル(Jack Daniels)というバーボンがある。
六本木のBARでこれをロックでオーダーすると、
グラスの下の方をかすかに色づける程度の量で、800円とか1000円。
ところが、
私が住んでいたアパート(マディソン・スクエア・ガーデンのそば)の近所にあった“Morry Mee Pub”だと、
グラスになみなみと注がれたバーボンの中に氷が収まっている、
という状態で3ドル50セント(日本円にして約500円)。

日本より安いのは当たり前なのだが、
グラスを手にしたときに“氷の重さ”ではなく、
“バーボンの重さ”を感じるというのは感動もの。
思わず嬉しくなってブンブン煽った。

で、たまにふと気づく。
「まるで麦茶を飲むようにバーボンを飲んでるなあ」
と。
こうなるとジャック・ダニエルも形無しだが、
まあ、所詮その程度の酒だと思い出し、また煽る。

Hudson River沿い、
West 21St.に「Ball」という名前の古めかしいBarがあった。
夏の、自転車に乗っているときだけ“風”を感じる、無闇に蒸し暑い日のこと。

Pier(桟橋)の特設ステージで毎年開かれる、
“Summer Rock Festival”を見た帰り、
誘われるように一軒のBarに入った。それが「Ball」。
夜7時過ぎ、まだ陽は高く、客はまばらだった。

自転車に乗っていた私は、
まず、それを置いて置ける安全な場所を見つける必要があった。
あっという間に、自転車が盗まれる街だから…。
すると、
一人の男が店の前の現れ、
「俺が見ていてやるよ」
と声をかけてきた。

「俺が見ていてやる」といわれても、
見ていてもらうような自転車でもないし、
また、大の大人が、
たかが自転車の見張り番をするというのも変な話なので、
最初は「大丈夫だから…」と断った。
だが、その男は、
「放っておくとなくなるぞ。大丈夫、俺が見てるから安心して飲んでこい」
と、あくまで自分が善意でいっているのだという様子。
そこまでいうのなら…と思い、
その男に“自転車の見張り”を任せ、
私は冷えたビールのあるバーのカウンターへと足を運んだ。



ペプシ2



「30年ぐらい前は、ハドソン川での船荷の積み下ろしも盛んで、
この店も繁盛していたんだが…」
などという店のオヤジさんの話を聞きながら、
かれこれ1時間、
“自転車の見張り番”の男が、カウンターに入ってきた。

「自転車は大丈夫だ」と男。

冷たいビールが喉に心地よく、気分も最高だったので、
とりあえず、その男にビールを1本、ご馳走した。
話を聞くと、店のオヤジさんの弟で、
“売れない!”コメディアンだという。

店に飾ってあった一枚のポスターを彼が指差した。
“星条旗を着た”彼が、おどけた表情で写っていた。古き良き時代の想い出だという。
すると今度は、「いいもの見せてやるよ」といいながら、
着ているシャツの袖を肩まで捲り上げた。

青い文字の刺青があり、
“Mother”
と記されていた。
「俺のことはmotherと呼びな」と彼。
もう、とうに50(歳)は回っていそうなその男は、子どもっぽい笑顔で握手を求めてきた。
ゴツゴツだが暖かい手だった。
改めて、Nice to meet you.

その晩、どうやって自分のアパートまで帰りついたのか覚えていない。
オヤジさんとMotherと3人ですこぶる旨い酒を飲み、
元気に、See you again!
と手を振り、Barを出たところまでは覚えているのだが…。
心地よい夜風の中、道端に転がっていたのかもしれぬ。
I passed out.

(飯村和彦)





newyork01double at 11:34|PermalinkComments(12) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月10日

週末だから!:「胎児の足跡?」




お腹に足跡



妻の友人がメールしてきた写真。
我が家にも、
子どもたちが母親の胎内にいたときの、
似たような写真とVTRがある。

けれども、
我が家の子どもたちは、
これほどまで鮮やかに、
胎児としての「足跡」を残さなかった。
CGかな?


(飯村和彦)

newyork01double at 15:01|PermalinkComments(15) 家族/ 子育て | 週末だから!

2005年11月09日

NY’90: Abuse(虐待)と猫



No.16
chicken
臆病もの。弱虫。
nuts (=crazy)
気違い。
damn
(超)馬鹿

Ex:
a) Are you chicken?
b) Nobody has ever called me chicken.
(映画:「バック・トゥー・ザ・フューチャー」より)

綺麗な表現ではないが、
アメリカ映画を観ているとしばしば耳にする表現なので…。
Chickenは、あのMichael J. Fox主演の、
「Back to the future」シリーズの中で、
上記のように、象徴的に使用されていたのでご存知の方も多いはず。
Nutsは、気違いで、crazyと同じ意味。
馬鹿はdamn.



トークン地図



Abuse(虐待)と猫
日本で大問題になっている“幼児・幼女虐待(child abuse)。
当然、アメリカでも深刻な問題である。

かつてロサンゼルス市警の取材をしていたとき、
1日に何人もの子どもたちが、
警察によって保護されてくるのを目撃した。
手足にあざをつくり、
恐怖のあまり、ほとんど口がきけなくなっている4歳の少女もいた。

それらのほとんどが、
母親、父親、兄弟などによる虐待だった。
子どもが泣けば殴るし、
ドラッグで錯乱状態に陥っては子どもを蹴り飛ばす。

父親から性的虐待を受けた経験のある少女も、
かなりの数に上っていた。

Abused Child Unit(幼児・幼女虐待担当)の刑事によれば、
虐待される子どもの年齢は低く、
まだ柔らかい子どもの頭を殴ったり蹴ったり…、
それは酷いものだという。
さらに、
虐待そのものが家庭内では発生している場合が多いため、
事件として警察に報告されてこない。
この点も日本の場合と同じである。

幼女の虐待シーンを、
写真やビデオに収めて売買するケースが激増しているのも日本と同じ。
刑事が参考として見せてくれたそれらの写真集は、
残忍きわまりないものだった。

そんな殺伐とした事件の多い状況にあって、
一時、ニューヨークで多発していたのが、ペット泥棒。
ある女性は、スーパーマーケットで買い物をしている隙に、
愛犬が何者かに連れ去られた。

いったいどんな連中が、何の目的でペットをさらっていくのか。
他人の犬や猫を見て、
「かわいい」から連れ去ってしまうなどというのは、
まだ、いい方らしい。
ほとんどが金のためだという。

ペットショップや動物実験を行なっている研究室にもっていくと、
一頭、10ドル程度で買い取ってくれるのだという。
いまでこそ、動物実験については厳しい監視の目があるが、
荒んだ時期にあっては、
ペットは手っ取り早く“現金化”できる“もの”の一つになっていた訳だ。

なかには、人間の子どもの誘拐事件さながらに、
飼い主を脅迫して多額の現金を要求するものまでいた。
10ドルで買い取っていた方も買い取っていた方で、
ろくなもんじゃない。
その10ドルが、
すぐにアルコールやドラッグに変わっていくことを承知の上で、
犬や猫を引き取っていた。



虐待と猫3



私の手元に、
当時、動物実験のあり方について特集記事を組んだ、
「The Village Voice」(新聞)がある。
そこには、動物を“もの”としてしか扱っていない、
証拠写真が掲載されていた。

頭に実験機器を組み込まれている猫の写真。
その目は、絶望と悲しみに満ちている。

盗む方も買い上げる方も、
“damn! (馬鹿)”、“nuts!(気違い)”
このようなことが、もう行なわれていないことを祈るばかりである。

(飯村和彦)





newyork01double at 11:34|PermalinkComments(12) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月08日

東京story:「ダブル」秘話〜言葉〜




菊と息子



子どもたちの成長を見守る親として、
まず、最初に悩んだのが「言葉」

私は日本人。
妻はアメリカ人。
親としては、どちらの母国語(=文化)も、
同じように習得して欲しいと願うもの。

子どもの頭脳は、柔軟性があるので、
放っておいても、
それぞれの親の言葉を自然に使えるようになると思いがち。
ところが、
そう簡単なことではない。

もちろん、
両親が単一の母国語の場合よりは、
二ヶ国語を上手に使えるようになる確率は高い。
が、それとて、
親が、適宜に子どもと接することができての話。
ランダムに英語と日本語が飛び交う環境だと、
言葉を覚えようとしている子どもが、混乱するらしいのだ。

そこで大切になるのが、英語と日本語を使う状況の線引き。
ある家庭は、家の外と中で、
またある家庭は、家と学校でというように分けたりする。
例えば、日本語は「家の外の言葉」、英語は「家の中の言葉」
という具合だ。

ところが我が家の場合、
私の英語は、母国語の日本語にかなり劣るし、
妻の日本語も、母国語の英語に比べると不完全だった。
となると、家の外と中でというような分け方は得策じゃない。

ならば…、ということで考えたのが、
「父さんの言葉(日本語)」と「母さんの言葉(英語)」
という線引き。
なんだ、よくある方法じゃない…、と思うかもしれないが、
多くの場合、その線引きが曖昧だったりする。
実は、この曖昧さが子どもを混乱させるのだという。

子どもが「ものを考える」ようになっていく過程で、
重要な役割を果たすのが言葉。
言い換えれば、
子どもは(もちろん大人もそうだが…)、
「考える」という作業をするために、きちんとした言葉を必要とする。
その言葉が、最初、英語なのか日本語なのかは、
子ども本人が自然に選択するらしいのだが、
専門家にいわせると、
それが曖昧だと、思考過程で、混乱が生じる可能性があるのだという。



息子と救命胴衣



ということで、我が家の子どもたちは、
最初、「母さんの言葉」でものを考えるようになった。
乳幼児の時期、母親との時間が多かったので自然な流れ。
そして次に、
その「母さんの言葉」を基準に「父さんの言葉」を覚えていく、
という経過を辿っている。

まさに言葉の追いかけっこだ。
結果、あっという間に、
父親、母親は幼い子どもに追い越されていく。

息子がまだ3歳にもならない頃、
母親の言葉(英語)を聞くなり、すっとこちらを振り向いて、
日本語で、その母親の言葉を私に伝えてくれたことがあった。
確か、
「Please, eat!」のような簡単な表現だったが、
間に入った息子に、「食べて!」と通訳されたときは、
なんというか…、頬が緩んだ。

(飯村和彦)





newyork01double at 14:44|PermalinkComments(14) 家族/ 子育て | ダブル

2005年11月07日

NY’90:NYのたむろバト



No.15
A little bird told me.
ちょっと小耳に挟んだの。
風のウワサに聞いたのさ。



情報源がはっきりしているにも係わらず、
わざと思わせぶりに話すときの、あのニュアンス。
平静を装い、ちょっと取り澄ました表情で、
彼氏の浮気を攻めたてる時などに便利かも。
もちろん、男性が使っても悪くはないが…。



hatoと42st



NYのたむろハト
当然、ニューヨークにもハトがいる。
街のいたるところに屯(たむろ)しているその様子は、
ビール片手に街角に屯しては、
野卑な笑い声を上げる輩のそれと一緒で、
忌々しい限り。

人が寄っていくと逃げるフリをして、
離れるとすぐまた集団になってエサをあさる。
もしかするとその生命力は、
ゴキブリより強いのではあるまいか?

三省堂の国語辞書で「はと」の欄を見ると、
「中形の鳥。胸を突き出して歩く。平和の象徴とされる」
とある。
次に同じ三省堂のEnglish Dictionary。
まずは、「pigeon」
「〈鳥〉ハト。〈俗〉だまされやすい人」

続いて「dove」
「ハト。柔和な人。〈米〉ハト派(穏健派)」
とある。

さて、ここで問題になるのが「pigeon」と「dove」の違いだ。
本来、“平和の象徴”とされるハトは、
野に住む、小柄なdoveの方であり、
あの忌々しい“屯(たむろ)バト”のpigeonではない筈。

参考までに、
OXFORDのEnglish English Dictionary(英英辞典)を見ると、
“pigeon”……bird of family とあり、
まあ言ってみれば、pigeonはdoveの親戚のようなもの。
なのに、自分たちが平和の象徴たるハトとして、
馴れ馴れしい態度で、幅を利かせている訳だ。



hatoアップ



その圧倒的な生命力と、人間がだす凄まじい量のゴミのおかげで、
何不自由なくコンクリートの街でも増え続けている。
特に、
McDonaldに代表されるファーストフード店が多いニューヨークでは、
それらの店がだすゴミが、
“屯(たむろ)バト”の絶好のエサとなっている。

深夜、7th Ave.を34th St.から南に歩くと、
舗道に身の丈以上の高さに積まれた、
黒いゴミ袋の山が目に入る。
McDonaldがだしたゴミの山である。
このゴミ袋、朝方には運ばれていくのだが、
それまでの数時間の間に、必ず!破られ、
なかのゴミが、当りに撒き散らされる。

最初に、そのゴミ袋を破るのが、
“たむろバト”ならぬ“たむろ人間”
彼らも生きていくために「食料」をあさる。
続いてやってくるのが、
その“たむろ人間”たちの様子を遠巻きに見ていた“たむろバト”。
「エサ」をあさる。
…なるほど、確かに胸を偉そうに突き出して歩いている。
“たむろ人間”が、不健康そうに背を丸めて歩いているのとは対照的。

けれども、例の「デデーポッポッ」という鳴き声はない。
不気味なほど、無口。
で、エサをあさるその姿は、
もはや「鳥」というイメージではなくなっている。


hatoと車


いつだったかCNNが、
日本の「ハト公害」のリポートをしていた。
浅草寺のハトに、米の配収センターのハト。
渋谷で、電話ボックスに群がっているハト……。
世界の主要都市が、この“たむろバト”に占拠される日も、そう遠くはないのでは…。

と同時に、辞書の、
「pigeon…〈鳥〉ハト〈俗〉だまされやすい人」が、
「pigeon…〈鳥〉ハト〈俗〉職を持とうとせず、街角で“たむろ”している人」
という表記に変わる日も近いのでは…?

A little bird told me.
この場合のbirdは、街角の“たむろバト”である筈がない。
なにせあの“たむろバト”、無口なのだから。
違いますか…、ニューヨークのことりちゃん

(飯村和彦)




newyork01double at 13:58|PermalinkComments(2) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月06日

NY’90:芝生の海〜セントラルパーク〜



No.14
Kill time
時間をつぶす。

Ex:I kill time this way.(これが俺の時間つぶしの方法さ)

例えば、出張中…
夕方の3時と6時にミーティングが組まれていたとする。
ところが、突然、2時過ぎに電話が入り、3時のミーティングがなくなった。
かといって、その時点で夕方6時のスケジュールを前に動かすのは難しい。
結局、4時間弱、時間を潰さなくてはいけない。
そんなとき、kill time.
もちろん、仕事以外での「時間潰し」にも使う。



セントラルパークの女性2



芝生の海〜セントラルパーク〜
ロケや取材のとき、天候や取材先の都合で、
突然、ポカンと時間が空いてしまうことがある。
見た目に似合わず(?)怠け者の私が、よく時間潰しに使ったのがセントラルパーク(Central Park)。

ゴロリと寝転がってボーッと空を眺めたり、
なんとなく耳に入ってくる言葉を、
散漫な状態で聞いているのは楽しいものである。

「無駄になった時間は、思い切り無駄に過ごす」

これぞ最高の贅沢であり、
「せっかく時間が空いたのだから、無駄にしちゃ損。何かしないと…」
などというのは愚の骨頂。
そのような方々とは、なるべく、
仕事以外ではお付き合いしないように心がけている。

吉田拓郎さんの「夏休み」という曲の歌詞に、
“休んでいるのに、落ち着かないってのは、
 知らぬうちに、病んでるんですね…”
というくだりがある。

こうなると「胃潰瘍で入院」ということになってしまうのだろう。

まあ、かくいう私も、
今年7月末、
胃潰瘍で10日間も入院したくちだから、
そう、大きな口はたたけない…。うむ…。

さて、セントラルパーク。
ある夏の日の夕方、いつものように“広い芝生の海”に、
ゴロリと転がっていた。
すると、
遠くの方で「コービー、コービー」の声。

最初は、なんといっているの分からなかった。
起き上がって声のする方向に目をやると、
バドワーザー(Budweiser)を一杯につめた、
白いスーパーマーケットのビニール袋を下げた男が、
芝生の海の中を歩いてくる。

なるほど…、「コービー、コービー」は、
「cold beer, cold beer.」だったのだ。
スーパーだと6本で5ドル程度のBudを、1本2ドルで売っていた。
しかし、いってはなんだが酷い発音…。
これは“聞き分ける”類のものではなく、
そのような状況を“覚えておく”類のものである。

元来、セントラルパーク内では、無許可でものを売ってはいけないことになっている。
とはいうものの、何でもやったものが勝ちのニューヨーク、
結構いい商売になっていた。



歩く女神」



そこで、“ブーム”ということを考えてみた。
テレビはよく、“ブーム”を追って取材する。
が、セントラルパークでくつろいでいる人たちを見ていると、
彼らには“ブーム”という概念がないか、あっても気にしていないかのように見えた。

あっちではローラースケートにスケートボード。
こっちではフリスビーにフラフープ。
新体操にゲリラカイト。
挙句の果てには“お手玉(ジャグリング)”まで…。

それぞれが、その人の持分の中で、その人なりに楽しんでいた。
いずれも、“流行”、“ブーム”という言葉にのって、
一度は日本でも脚光をあびた「ものたち」なのだが、
今、日本人のどれだけが、
これらの「ものたち」と日常的に付き合っているかとなると、
疑問符だ。

日本の雑誌を見ていると、
「秘かなブーム」
という見出しをよく目にする。
本来、“秘かな”ものは、“ブーム”であるはずがないのだが、
対照的な日本語と英語を組み合わせることで、
極めて! 日本人が好きそうな語感をもつ言葉になっている。
国会での、首相や大臣の答弁に代表される、
“曖昧さ”が一つの国民性なっている日本ならではの言葉じゃないか?

自分の意思をハッキリ表明する。
その訓練を子どもの頃からさせられているアメリカ人には、
「秘かなブーム」
なんていうニュアンスは理解しがたいはずだ。

セントラルパークでは、
こんなことを考えながらボンヤリと時間が潰せる。
遠くでは、「コービー、コービー」の声…。
I kill time this way!(これが俺の時間の潰し方さ!)

(飯村和彦)




newyork01double at 10:59|PermalinkComments(6) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月05日

週末だから!:愉快なペンギン



妻の友人から、
ペンギンの動画(多分CG)がメールされてきた。
一応、「愉快なペンギン」
と、タイトルを勝手につけた。
ともかく良い。
まずは、ご堪能あれ!



愉快なペンギン



この映像には、
「こんなこと、あなたも一度は、やってみたいと思っていたでしょう」
という意味合いのキャプションがついている。

「愉快なペンギン」というよりも、
「率直なペンギン」とか、
「本能的なペンギン」とか、
「人間らしいペンギン」とか、のタイトルの方が良かったか?

皆さんは、どんなタイトルをつけますか?
いろんなアイディア、待ってます!


(飯村和彦)





newyork01double at 15:12|PermalinkComments(14) 週末だから! | 家族/ 子育て

NY’90:グッチのバッグ



No.13
That’s really bad.
ありゃ、本当にいいぜ。

Ex: That is a really bad bag.(ありゃ、最高のバックだ)

「bad」を逆の意味で使う。
「cool」(イケてる、格好いい)より幾分強いニュアンス。
もとはといえば黒人が使い始めた表現。
新しい表現は黒人が作りだす場合が多く、その表現が白人社会で一般化すると、彼らはまた、別の新しい表現を生みだす。
アメリカのもつ底知れぬパワーは、このようなところに起因しているのかもしれない。

グッチのバッグ
あるとき、私の親友が「驚いた」とばかりに話しはじめた。
彼女は、日本のテレビや雑誌関係者がニューヨークで取材にあたるときに、
リサーチやコーディネーションを頼む「才女」で、日本語が上手い。

その日彼女はロケの後、ある日本のテレビクルーの買い物に付き合ったのだという。
彼女を驚かせたのは、その買い物の仕方だった。
「1000ドルもするバッグや、何百ドルもするスカーフとかネックレスを次々に買うんですよ。私、信じられません。どうして日本人の人たちは、ティファニーとかエルメスとかの名前に、あんな大金を払うんですか?」



ティファニー



彼女も、知識としては「日本人のブランド好き」について理解していても、
その現実を目の当たりにして改めて驚かされたのだろう。
すでに「日本人の基本的志向」として「一般化」されてしまっているこの事実について改めて問われたとき、
最初、なんと答えていいのか言葉が見つからなかった。

戦後、日本製品は「安いがすぐに壊れる」といわれていた時期があったと聞くが、その頃からの高級品への憧れが、世代を越え、小金を持った今に表れているのかと考えたりするのだが、私見に過ぎない。

そういえば、ひったくりに関しておかしな話を聞いた。
ニューヨークで事件や事故にあった日本人観光客の相談や調査にあたっているニューヨーク市警アジア諮問委員会日本支部の村上さん(当時)の話だ。

「よく日本人観光客の女性から、
{バッグをひったくられた!}という電話が入ります。それで、
{バッグの中に現金はいくら入っていたのですか?}と聞くと、
{200ドルくらいです。…でも、その現金より1000ドルもした、買ったばかりのグッチのバックの方が大きな被害です}
と答えます。そのたびに私は、こんなアドバイスをしています。
{どこでひったくりにあったかを覚えていれば、その近くのゴミ箱を一度探してごらんなさい。バッグが捨ててあるかもしれませんから}と。
奴らが欲しいのはバッグではなくて、現金なのですから」

事実、中身を抜かれたバッグが見つかる場合が多々あるそうだ。
ひったくった連中にとっては、1000ドルもするグッチのバッグも10ドルで買える安物のバッグも、
バッグはバッグ。
「ブランド」なるものへの価値観などないのだという。
だいたい、グッチだとかエルメスだとか、バリーなどという名前すら知らない場合が多く、
そのブランドが1000ドル以上もするなどということより、
現金がいくら入っているバッグなのか、
の方が重要なわけだ。

さしずめひったくりの連中がグッチのバックを見て、
That’s a really bad bag.
といったとしたら、
「ありゃ、高そうですげーいいバッグだ」
というより、
「ありゃ大金が入っていそうな、いいバッグだ」
という意味になるのだろう。
連中にかかれば、さすがのグッチも形無しということ。

(飯村和彦)





newyork01double at 10:55|PermalinkComments(2) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月04日

東京story:「猫の話」〜まんざらでもない〜




NEKO2



夜遅く家に帰ると、
犬が玄関まで迎えに来るという話はよく聞く。
猫も同じだった。
彼女も毎晩玄関に「滑り」でてくる。

まだ、生まれて4ヶ月弱の子猫だからなのか?
猫も猫なりに生活上の「知恵の実」を沢山食べ、
大人になっていくと変わってしまうのか?
さて、そうでもないだろう。
そう考えると、猫もまんざらでもない。

ゴロゴロ、ゴロゴロ…。
彼女の喉がなる。
とってもいいものだ。
息子や娘が、
なんど額を引っかかれても彼女を離さない理由は、
そんなところにあるのかも知れない。


(飯村和彦)


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2005年11月03日

NY’90:アパート(apartment)探し



No.12
Up to you.
あなた次第。自分で判断して。
あなたに任せる


例えば会社を辞めようかどうか悩んでいる友人がいたとする。
第三者的にみれば辞めた方がいいと思っていても、
まあ、最終的には本人が決断すべき事柄だ。
そんなとき、Up to you.(やっぱり、あなた次第)
また、誰かと仕事をしていて自分の頭が混乱をきたした場合も、
Up to you.(もう、あなたに任せる!)



エンパイア2



アパート(apartment)探し
ニューヨークに住んでいたときのアパートは、家賃が1200ドル。
これを同居人にマイケルと半分ずつ払っていた。
さて、その家賃が高かったのか安かったのか…。

確かに広いことは広かった。
2ベッドルーム。10畳ほどの部屋が二つと20畳ほどのリビング。
“一応”、
キッチンとバスルームもあった。
また、建物が古い分天井も高く、マイケル曰く、
「ミッドタウンにあるアパートでこれだけの広い空間があるのは珍しい」
とのことだった。

ところが、このアパート、
マイケルの前の同居人が、それまでオフィス空間だったフロアを、
ロフト風に改造して人が住めるようにした代物。
よりて、その機能は惨憺たるものだった。

まず、キッチン。
水道(running water)が、
キッチンとして使っているところまで来ていないので、
当然、流しはない。
だから、何かを作ろうと思えば、
唯一の蛇口があるバスルームまでいって水を汲んだり、
食器を洗う必要に迫られる。
アパートがだだっ広い分、通路を往復すること約30メートル。
自然、そこで食事をつくるなどということはしなくなる。

次にバスルーム。
これもきちんとした“ルーム”になっていたわけじゃない。
アパートの中を走っている通路の突き当たりに、
簡易シャワー(半畳ほどでビニールのカーテンが付いているもの。
日本でも一昔前、通販で売っていたあの簡易シャワーだ)があり、
その横にある2畳ほどの空間がトイレ。
まさに、
“取ってつけた”という表現がぴったりのバスルームだった。

おまけに、
簡易シャワーまでの細長い通路には、なぜか扉が二つもあり、
締めると一応“プライベート空間”が出来上がったりする。

まあ、きちんとお湯はでた。

そのアパートはボイス(毎週水曜日発売の新聞、The Village Voice)
の不動産欄で見つけたものだった。
最初、アパートを訪れたとき、
マイケルが差し出した日本酒の熱燗、それも徳利などというものは使わず、
いきなりビンごと暖めてしまうという大胆な飲み方に驚かされ、
“キッチンやバスルームがどうなっているのか”、
などということまで考える間もなく、
酔ったその場の勢いで決めてしまった訳だ。

当時は、ニューヨークらしいと勝手に解釈して住んでいたのだが、
真冬、暖房が壊れているのに気づいたときはまいった。
スチームが、
鉄の管を“走りまわる”ことによって部屋が暖かくなるはずなのだが、
カンカン、ガンガン、冷えた鉄の管がスチームの熱で、
やたらと大きな音をたてる割には、一向に部屋が暖かくならなかった。

結局、部屋の中にありながら、
マフラーを首に巻きつけ、
厚手のソックスをはいてベッドに潜り込むという生活を強いられた。

もし、ニューヨークでアパートを借りるという計画がある人がいれば、
できるだけ詳細にその機能をチェックすることをお勧めする。
特に、ビレッジにあるようなアパートの場合は尚更である。



アパートアート



同居人を希望する人は、
その同居人がどんな人物であるかを観察することが、
必須であることは言うまでもない。
ご存知のように同性愛を好む方々も多いので、その気のない方は要注意だ。
お互いが不幸になる。

私の場合はマイケルに、
“僕には彼女がいる”
ということを強調することで自分のキャラクターを説明した。

一方、同性愛者のルームメイトを希望する人もいるだろう。
その場合も、Voiceを細かくチェックするといい。
よい情報がたくさん掲載されている。

いづれにしてもアパート探しは結構骨の折れるもの。
舐めてかかると碌なことはない。
自分の意思をはっきり表明して(speak your mind!)、
なんでも自分で決めないと、
あとでとんだ目にあうのがこの街。

Up to you. (任せます)
なんて具合に、
アパート探しを訳の分からぬ不動産業者などに任せると、
法外な手数料を要求されたり、
後にオーナーとトラブルになったりするから注意が必要だ。

また、
「プールのあるアパートに住みたい」
だの、
「フロアは20階よりも上がいい」
などと、マンハッタンで生活することに“幻想”を抱き、
信じられない勘違いをしている若い日本人女性もいたりする。

そんな人に限って“Up to you.”

Hunter Collegeの語学コースに通っていた、
(…といっても学校にいったのは最初の2、3日だけだったというが)
日本人の女の子が、
バーで知り合った“気の合う”アメリカ人男性に、
アパートに転がり込まれ、
挙句、自分の部屋に監禁されてしまうという事件も発生した。

恐ろしい奴がいるものだが、
きちんとした自分の“意思”をもたぬまま、
アパートで一人暮らしをはじめると、
知らぬ間にひどい状況に陥ることがあるから、要注意だ。

(飯村和彦)





newyork01double at 13:50|PermalinkComments(5) ニューヨーク | カッコイイ英語

2005年11月02日

東京story:「ダブル」秘話〜兄妹〜



娘も自宅出産。
彼女は我が家のバスタブの中で、
「ブクブク…」と泡をたてながら生まれてきた。

少しだけ、背を丸めるような姿勢で浮いてきた彼女は、
すーっと妻の腕の中に収まった。
助産師さんがその背中を軽くたたく。
と、一呼吸あって、
「プクン!」
口からごく少量の羊水を吐き出しながら、
娘は、“小さな”産声を上げた。

妻が、ふーっと息をはく。
そんな母親の安堵を感じたのかどうか、
娘、
今度は、意を決したように大きな声で泣き出した。
と、みるみる全身がピンク色に輝きだした。



宝物を抱く3



息子は、
そんな母子の姿を、固唾をのんで見守っていた。
つい今しがたまで、
そわそわと動き回っていた彼だったのだが、
途端、言葉を失ったようだった。
けれども、そんな息子の表情が、
妻のそれと同じように柔らかだったので安心した。

兄と妹、うまくやっていくだろう。
そんな確信と「希望」が沸いた瞬間だった。

(飯村和彦)





newyork01double at 13:16|PermalinkComments(5) 家族/ 子育て | ダブル

2005年11月01日

NY’90:地下鉄に乗って(2)「たむろ」のメッカ、ハーレム{下}



No.11
cold feet
(怖気づいて)急にやめる



消火栓3



地下鉄に乗って(2)「たむろ」のメッカ、ハーレム{下}
我々は、ハーレムの目抜き通りである125th St.を東から西に向かって歩き出した。
ベタベタと無秩序に貼られたポスター、割れたビール瓶、ところどころにある廃墟と化したアパート。
渋谷の東急本店通りを思わせる真新しい信号機も、
目玉一つ、赤が無残に割られていた。
「ビリビリきますネ」
とミュージシャンの山口岩男くん。
心なし、彼の歩調が速くなっている。

撮影をしながら歩いている我々の姿に目をとめる輩も多く、
「小銭をくれ」
だの、
「タバコはないか」
など、あれこれちょっかいをだしてくる。

「Hey, brother?」
…俺たちは、あんたの弟でもなけりゃ、兄でもない!

別に無理やり彼らを嫌っているわけじゃない。
多くの善良な人たちには申し訳ないのだが、その程度の強い意志をもっていないと、いつ、どこで、誰にスキを突かれるか分かったものではない。
ボーッとしていると、あっという間に狙われる。
悪事で日々、生活している輩は、
人を観察する目だけは肥えている。

よく、
「最近のハーレムは、だいぶ良くなりましたよ」
と軽口をたたく日本人がいる。
が、そんな人がいい標的になっていくことを忘れてはいけない。

一方、
ならば、どうしてそんな場所に足を運ぶのか。
行かなければいいだろう。
と、いう人もいる。
無論正論。
多くの人たちはそうすべきである。
ところが、
それでは何も始まらない。

また、
正論ばかりに身を委ねていたのでは、生きていけない人間も少なくいないのだ。
その代表がアーティストであり、
時に、メディアの人間だったりする。
よりて、そんな「人種」は、砲弾の中をも疾走する。



給水塔3A



さて、あたりに気を配りながら、
Lenox Ave. と125th St.の交差点を右に曲がり、
北の方へ向かった。
…126、
…127、
…128th St.まで歩いていくと、突如、街の雰囲気が悪化する。

路上や戸口で、何をするでもなく、
ただ“屯(たむろ)”している連中の視線が我々の姿を不気味に追う。
「小銭をくれ」
などといってヘラヘラよって着たりはしない。
「ちょっとヤバイですね」
とカメラに向かってささやく山口くん。

と、そのとき、
道を挟んだ反対側、ビルの前で屯していた男たちの中の一人が、
突如、大声を張り上げた。
なんといっているか判然としなかったが、
その言葉が、我々に向けられていることだけはハッキリわかった。
自然、足が止まる。
次の瞬間、きびすを返し、足早に今来た道を125th St.に向かっている我々だった。

We got cold feet.

タバコ一本ではすまない場合が、多々あるのだ。


(飯村和彦)



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