2009年11月

2009年11月25日

この世に一人だけの人にあった瞬間とは?



誰もがその瞬間を体験しているはずなのに、
その時はそれとは気づかない。
ある人は、しばらく時が流れたあとに、
「ああ、あのときの感情、あの胸のときめきがそうだったのか…」
と回顧できるかもしれない。
それはそれで幸福なことなのだが、
やはり、その瞬間に「これだ!」と心に突きあがるものを感じられたら、
その後の人生も大きく変わってくるのだろう。

パウロ・コエーリョの「アルケミスト」
その中に、
大切な人に出会った瞬間の心の在りよう、
理屈ではない刹那的な実感、
打算のない崇高さが明快に記されている。



アルケミスト



以下、「アルケミスト」より抜粋


その瞬間、少年は時間が止まったように感じた。
「大いなる魂」が彼の中から突きあけてきた。
彼女の黒い瞳を見つめ、
彼女のくちびるが笑おうか、黙っていようか迷っているのを見た時、
彼は世界中で話されていることばの最も重要な部分
――地球上のすべての人が心で理解できることば――を学んだのだ。

それは愛だった。
それは人類よりももっと古く、
砂漠よりももっと昔からあるものだった。
それは二人の人間の目が合った時にいつでも流れる力であり、
この井戸のそばの二人の間に流れる力だった。

彼女はニッコリほほ笑んだ。
そして、それは確実に前兆だった。
――彼が自分では気づかずに、一生の間待ちこがれていた前兆だった。
それは、羊や本やクリスタルや砂漠の静寂の中に、
彼が探し求めていたものだった。

それは純粋な「大いなることば」だった。
それは宇宙が無限の時を旅する理由を説明する必要がないのと同じように、
説明を要しないものであった。
少年がその瞬間感じたことは、
自分が、
一生のうちにただ一人だけ見つける女性の前にいるということだった。
そして、ひと言も交わさなくても、
彼女も同じことを認めたのだった。
世界の何よりもそれは確かだった。


(飯村和彦)

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2009年11月12日

「自由の女神」が見つめる自由とは?




青女神



息子の撮影した写真をアート風に…。
基本的な色合いは決めるが、
出来あがりを明確に予想することはできない。
例えば、
焼き物を創るとき、
上薬を塗って釜に入れ、
その完成を待つのに少しだけ似ている。

写真の色合いを見たり、掠れ具合を調節したり…
そんなところにも、
自分の力ではどうにもならない、
ある種の現象がある。
当たり前といえばそれまでなのだが、
その現実が妙に楽しい。


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(飯村和彦)

newyork01double at 16:22|PermalinkComments(0) 世界の風景 | ニューヨーク

2009年11月09日

マンハッタン街角、伝統的なユダヤ人とエンパイア




エンパイア



本日は、気分転換にニューヨークの風景。
ユダヤ人の方々は商売上手。
金融や貴金属だけではなく、
様々な分野で活躍している。
弁護士やジャーナリスト、医師も多い。
もう10年以上になるか、
格安カメラ店も好調だなあ…。


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(飯村和彦)

newyork01double at 19:54|PermalinkComments(0) 世界の風景 | ニューヨーク

2009年11月03日

「自由連想」…沢木耕太郎さんの「深夜特急」を読みながら



このことろ、
時間を見つけては沢木さんの本を読み返している。
だいぶ前に書かれたものでも、
読んでいる時代環境や、
そのとき自分の置かれている状況によって、
喚起されるものは当然変わる。
それがとっても興味深く楽しいので、
かつて読んだ本でも
改めて手にすることになる。


飛翔


先日数年ぶりに読み返した「深夜特急」では、
これから↓(下)に抜粋する部分である。
何が楽しいのかといえば、
そこに書かれている内容そのものではなく、
文章を読んで勝手に頭に浮かんでくる景色というのか、
昨今の社会事象に対する想念というのか、
兎も角、
本の内容とは直接関係のない事柄が、
奔放に自分の頭に湧いてくる現象が面白いのだ。

例えばそれは、
現在、泥沼化しているアフガン情勢であり、
俳優や女優の薬物使用問題であり、
国民から「NO!」を突きつけられた自民党政治の醜さであり、
経済格差に喘ぐ限界集落の姿であり、
悲しげな表情で赤いランドセルを背負う少女の姿だった。
そこには明快さも脈絡もない。

このような「深夜特急」の読み方をしては、
沢木さんに申し訳ないかもしれないが、
少なくとも過去に一度は、
沢木さんの見ている風景を思い浮かべながら、
道程を共にするかの勢いで、
真剣に読んだのだから許してもらおう。

では、幾分長くなるが、
沢木さんの「深夜特急」から一部を抜粋させていただきます。
↓の文章から、いったいどんな事象が喚起されるのか、
皆さんも、
思いがけない「思考の自由性」を楽しんでみて下さい。



以下、「深夜特急」より抜粋

「昔、テヘランの北西に
「秘密の花園」と呼ばれる地があったといいます。
11世紀から13世紀にかけて西域を荒らした暗殺者集団、
イスラム教の一派であるイスマイリ派の根拠地がそう呼ばれていたのです。
四千メートル級の山に堅固な城を築いた彼らは、
そこから無数の暗殺者をおくりだしました。
彼はいかにしてその暗殺者を生み出していったのか。
書物によれば、
それは次のような方法だったということです。

教主ハッサンの腹心の男たちが村々を訪ね歩き、
これはという屈強な若者を見つけると、ある薬を飲ませてしまう。
飲まされた若者は幻想の中に浮遊し、我を忘れる。
その隙に、男たちは若者を「秘密の花園」に運び込んでしまうのです。
そこで彼らを待っているのは、地上と隔絶された夢のような生活です。

数日間の官能的な時を過ごした後、
彼らは再び薬を飲まされ、村に送り返されます。
しかし、そこには、以前と変わらぬ貧しい暗い生活があるだけなのです。
「秘密の花園」での数日をしった後では、
その生活の単調さが、
以前にも増して耐え難く感じられるようになります。

そこに再び腹心の男がやってきて、若者にいうのです。
楽園に戻りたかったら教主様の命に服せ、と。
このようにして、多くの若者が、
イスマイリ派に敵対する者を屠るために送り出されていくことになった、
といいます。

暗殺者になることを受け入れた若者は、
出かける直前に薬を与えられてこういわれます。
暗殺に成功したら楽園に連れていってやろう、
万一失敗しても、だから殺されても、
やはり楽園にいけることには変わりないのだ、と。

そしてその薬こそがハシシだったというのです。
西欧の言葉で暗殺者を意味するアサッシンは、
ここから来ていると言われています。」

以上、抜粋(句読点、改行等を一部変更)


どうでしたか?
電子化された文字では読みにくいですね。
自由を求めて、
皆さんも書籍で「深夜特急」を読んで見てください。
思いがけない、
自分なりの発見があるはずです。


(飯村和彦)

newyork01double at 23:35|PermalinkComments(0) 気になるBOOKs