「ダブル」秘話:ハーフではなく、「ダブル」の理由東京story:猫の話:突然ですが、彼女も家族の一員なので…

2005年10月20日

NY’90:Delivery(配達)



No.6
Been through a lot
あの時は大変だった
とっても辛かった

例えば、ある時期やある期間に、
辛いことや悪いできごとがたくさん重なった。
そのときのことを今、
「あ〜、あのときは大変だった」
とか、
「とっても辛かったなあ」
と思い返して話すときの表現。
冗談ではなく、本当に大変だったときのこと。



壁アート



Delivery(配達)
Deliveryと聞くと、郵便からソバの出前まであれこれある。
日本でも、深夜、ちょっとした酒のつまみに、
“時計を見ながら…”ピザの到着を待ったものだ。
人間が少しずつ、怠惰になっていくのもうなずける。

さて、ニューヨーク。
ここでは、ともかく何でもDelivery(配達)してくれる。
街で、デッカイ籠のついた、
古くて頑丈そうな自転車に乗っているのが、チャイニーズレストランの配達。

その他、
ピザは勿論、
コーヒー、サンドウィッチ、サラダ、スープ等々の食品から、
トイレットペーパー、ナプキン、コピー用紙、鉛筆、消しゴムなどの日用雑貨にいたるまで、
ほとんど電話一本で届けてくれる。

特にDelivery専門の店があるという訳じゃない。大抵の店がごく当たり前に配達サービスをしている。
それぞれの店が、チャイニーズ系やスパニッシュ系などの、
「頑張る安い労働力」を雇っており、
彼らが自転車をぶっ飛ばしながら配達にあたるのだ。

アメリカ人女性の多くが、
歳をとると信じられないほどブクブク太っていく理由の一つは、
こんなDeliveryサービスにあるのではと考えてしまうのは私だけか…。

配達の方法を見ていて日本と徹底的に違うのが、
多くの場合、その手段として自転車を使っている点。
日本のソバ屋は特殊な“装置”をつけたオートバイに乗っていることが多いが、
そんなものニューヨークには存在しない。
だいたいが、オートバイやスクーターをほとんど見かけないのが、
この街の特徴ですらある。



ヒスパニック少年とカゴ



また、ニューヨークのDeliveryの方々は良く歩く。
彼らの表情を見ていて、
一年前に取材したティワナのメキシコ人たちの後ろ姿を思いだした。
何日もかけてアメリカとの国境まで歩いてきて、
夜中に「夢」を求めて国境である川を渡っていく…。

国境警備隊の警備の網をかいくぐって見事!アメリカ入りを果たした彼らを待ち受ける生活は何なのか?
と、取材をしながら考えたのだが、
それぞれが、いろいろな思いを“足で”運んでいるのは、
ティワナもニューヨークも一緒に違いない。

自分の国に家族を残している青年もいるだろう。
しかも、少ない月々の給料から自分の国に残した家族に、仕送りをしているかもしれない。

ある日、
近所のスーパーで買い物をして、
大きな茶色の紙袋を抱えてアパートのエレベーターホールに入ったときのこと、
いい加減そうな若いアメリカ人が私を呼び止めた。
「何のデリバリだい? コーヒーとサンドがあれば、俺が高く買ってやるぜ」
私をチャイニーズのデリバリと間違えたらしい。

腸(はらわた)が煮えくり返った。
別に、チャイニーズのデリバリと間違えられたからじゃない。
その高飛車でクソ生意気そうな、人を小馬鹿にした態度に腹がたった。

私は自分が「いい人間」だなんて思っていない。
さらに、デリバリという仕事をマンハッタンでやっているわけでもない。
ただ、実際にデリバリをしている人たちは、
毎日、幾度となく、
そんな腸が煮えくり返る思いをしているに違いない。
そう思うと、少々複雑な心境になる。

彼らのうちいったい何人がニューヨークで、さらにはアメリカという国で成功を収めることが出来るのか…。
I’ve been through a lot.(あの頃は辛くて大変だった)と、Delivery(配達)時代を懐かしむように振り返ることが出来る人は、
ごくごく少数に違いない。

(飯村和彦)



ナイトショット



newyork01double at 23:03│Comments(9) ニューヨーク | カッコイイ英語

この記事へのコメント

1. Posted by りんりん   2005年10月21日 09:41
ご訪問ありがとうございました。
最近やたらと忙しく、自分の体調が悪いと
何でも配達して欲しいって思いますぅ。
お食事も、おすしとピザと丼ものしか
この辺りはないので、飽きちゃいます。
身体にも悪いし。
ヘロヘロなのにトイレットペーパーを買いに行くのって
情けない気分になりますよ。

また、いらしてくださいね。
じっくり読ませていただきまね。
2. Posted by りんりん   2005年10月21日 09:43
追伸
すみません。飯村さんは有名な方なんですね、きっと。
私、自分ではTVをつけないような人なので疎いんです。
きっと主人は知ってる筈。
起きたら、一緒にここに来てみますね。

>りんりんさま
 私自身は有名人じゃありませんよ。
3. Posted by ilovedesign   2005年10月21日 15:02
こんにちは!コメント有り難うござりました。
いいブログですね。ちょくちょく遊びに来ますです。
ワタシは1999年からアメリカです。今年の5月に結婚で台湾に来ました。けど、12月にはまたNYで仕事に復帰っす。ワタシの場合は子供が出来たら台湾人との「ダブル」ですな。
台湾にもフィリピン、インドネシア、タイからの期間労働者(3年)がたくさんいます。南米にしろ、東南アジアにしろ、子供を大学に入れる学費を稼ぐ、ためには外国で出稼ぎになってしまうのですね。つくづく、「お金を作る」って事は大変な事なんだ、と感じる秋の今日この頃。

>ilovedesignさま
 同感です。お金を作るのは…。
4. Posted by コウサカシノブ   2005年10月21日 18:03
はじめまして。
TB、それにコメントありがとうございました。
飯村さんのブログ、興味深く拝見しました。
私も以前、ドイツの人と結婚していたことがあります。
前夫と離婚し、その人も他界してしまったので
子どもはダブルになる機会をのがしたまま高校生になりました。
それから今の夫と再婚して、静かに暮らしています。
またおじゃまします。

>コウサカシノブさま
こちらこそ、またそちらにお邪魔します。
5. Posted by kirinul_7   2005年10月21日 21:40
コメントを頂きましてありがとうございます。このブログの写真!ステキですね。文面も拝見しました。同じ人間なのにどうしてこんなに置かれている立場、現実、希望、悲しみ、お金、すべてにおいて相違があることを感じます。飯村さんも自分が日本人なのだと感じる瞬間が幾度とあるのではないかと思います。

>kirinul_7さま
 そうですね。
 日本人であると感じる瞬間は、多いかもしれませんね、
 よろしくお願いします。
6. Posted by 元気が出る言葉のプレゼント   2005年10月21日 23:37
ヒロです。コメントありがとうございました。
ハーフでなく、ダブル。
ダブルって、とてもいい言葉ですね。
ブログも、詩的な文章で、とても素敵です。
また、立ち寄らせていただきます!

TBもありがとうございました。

>元気が出る言葉のプレゼントさま
 こちらこそよろしく願います
僕の方でも、TBさせていただきます。
7. Posted by アキラ   2005年10月22日 02:05
ニューヨークは歩くのにちょうどいい街だな、以前訪れたときに思いました。
当時はふと見上げるとトレードセンターがありました。
NYのお写真に当時の記憶が蘇ってきました。
場所は忘れましたが、同じような壁画を見た記憶があります。
当時はまだ写真を撮らなかったので、こうして写真を拝見させて頂きちょっと嬉しくもあります!

>アキラさま
 そうですか。
 懐かしい写真、たくさん載せていきますから
 楽しみにしてください。
8. Posted by Noodles   2005年10月23日 09:52
とても良質なブログにめぐり合えました。
ありがとうございます。

ニューヨーク在住7年、上記の記事のような体験、少なからずありました。

例えば、電車の座席に座ろうとした時、
隣に座っていた白人の老人から、

「ここはお前の座る席ではない」とか。。

それでもまだ、ましなのでしょう。
いろんな思いを込めて、彼らの子供たちの未来に期待します。

>Noodlesさま
 何事も、少しずつですね。
9. Posted by はっちゃん   2005年10月25日 11:03
自転車のデリバリーがほとんどと言うこと。

太ったおばちゃん・おじちゃんがそんな仕事をしたら、きっと、良いダイエットになるのに・・・


秋の夜長・・・
デリバリーを頼むことも無く、我が家で、インスタントラーメンをすすりながら、お酒を片手に、夫婦で会話するのも良いものですっ!
(外を走るチャルメラの音を聞きながら・・・)

>はっちゃん様
 おっしゃる通り。
 牧歌的で良いですね。

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