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2005年11月08日

東京story:「ダブル」秘話〜言葉〜




菊と息子



子どもたちの成長を見守る親として、
まず、最初に悩んだのが「言葉」

私は日本人。
妻はアメリカ人。
親としては、どちらの母国語(=文化)も、
同じように習得して欲しいと願うもの。

子どもの頭脳は、柔軟性があるので、
放っておいても、
それぞれの親の言葉を自然に使えるようになると思いがち。
ところが、
そう簡単なことではない。

もちろん、
両親が単一の母国語の場合よりは、
二ヶ国語を上手に使えるようになる確率は高い。
が、それとて、
親が、適宜に子どもと接することができての話。
ランダムに英語と日本語が飛び交う環境だと、
言葉を覚えようとしている子どもが、混乱するらしいのだ。

そこで大切になるのが、英語と日本語を使う状況の線引き。
ある家庭は、家の外と中で、
またある家庭は、家と学校でというように分けたりする。
例えば、日本語は「家の外の言葉」、英語は「家の中の言葉」
という具合だ。

ところが我が家の場合、
私の英語は、母国語の日本語にかなり劣るし、
妻の日本語も、母国語の英語に比べると不完全だった。
となると、家の外と中でというような分け方は得策じゃない。

ならば…、ということで考えたのが、
「父さんの言葉(日本語)」と「母さんの言葉(英語)」
という線引き。
なんだ、よくある方法じゃない…、と思うかもしれないが、
多くの場合、その線引きが曖昧だったりする。
実は、この曖昧さが子どもを混乱させるのだという。

子どもが「ものを考える」ようになっていく過程で、
重要な役割を果たすのが言葉。
言い換えれば、
子どもは(もちろん大人もそうだが…)、
「考える」という作業をするために、きちんとした言葉を必要とする。
その言葉が、最初、英語なのか日本語なのかは、
子ども本人が自然に選択するらしいのだが、
専門家にいわせると、
それが曖昧だと、思考過程で、混乱が生じる可能性があるのだという。



息子と救命胴衣



ということで、我が家の子どもたちは、
最初、「母さんの言葉」でものを考えるようになった。
乳幼児の時期、母親との時間が多かったので自然な流れ。
そして次に、
その「母さんの言葉」を基準に「父さんの言葉」を覚えていく、
という経過を辿っている。

まさに言葉の追いかけっこだ。
結果、あっという間に、
父親、母親は幼い子どもに追い越されていく。

息子がまだ3歳にもならない頃、
母親の言葉(英語)を聞くなり、すっとこちらを振り向いて、
日本語で、その母親の言葉を私に伝えてくれたことがあった。
確か、
「Please, eat!」のような簡単な表現だったが、
間に入った息子に、「食べて!」と通訳されたときは、
なんというか…、頬が緩んだ。

(飯村和彦)





newyork01double at 14:44│Comments(14) 家族/ 子育て | ダブル

この記事へのコメント

1. Posted by りんりん   2005年11月08日 12:48
へぇ。そうなんですか。
思考回路が混乱しちゃうものなんですね。
自然とバイリンになるって思ってました。

もうNYに行って15年以上になる友人は
今では日本語が不自由になってしまってますが
彼女は、英語で考えてるのかな?

>りんりんさま
 思考上の混乱といっても、成長過程のことでしょうから、
 大人はどうなのかな…。
 また「思考回路が混乱」というほどのことでもないようです。
2. Posted by pate   2005年11月08日 12:55
この前行ったアイススケート場で
日本語と(多分)韓国語をごちゃ混ぜにしゃべっている親子を見ました。
彼は今2つの言語がごちゃ混ぜになっている時期だったのかな?
と、この記事を読んで思ったりしました。

>pateさま
 分かりませんが…。
 ただ、二つの言葉が混乱するといっても思考上(…論理性)のことらしいですから、
 それが、言葉となってどの程度表れるのかは濃淡があると思います。
3. Posted by ロコモーション@ミミ   2005年11月08日 15:21
ダブルの友人が数人いますが、彼らはしゃべりは
英語も日本語もパーフェクトですが、読み書きが
インターナショナルスクール出なので、うまく
ないです。昔、若いときに漫画を声を出して
読まされたのには、恥ずかしかった!
要は親の教育次第で差がでるみたいですね。
4. Posted by なおみ   2005年11月08日 15:52
こんにちは。
思考回路が混乱しちゃうなんて知りませんでした。
日本語も外国語も理解できるなんていいなぁ。なんて、単純にうらやましい限りでしたから(笑
それでもこどもは、ちゃんと言葉を理解して吸収していくんですからすごいですよね。

>なおみ様
 もちろん、子どもは偉大です。
5. Posted by 前向きな心と人のぬくもり   2005年11月08日 21:30
飯村和彦さん
 コメント有難うございます。
そうですっ。お互いが穏やかになる。大切ですね。
 ちょっとした言葉が重みを持ちますね。
 またお立ち寄りください。

>前向きな心と人のぬくもり様
 そうですね。ちょっとしたこと…。
6. Posted by アキラ   2005年11月08日 23:46
やはりこういうことは子供の特権ですね。
順応性はやはり子供にはかなわないみたいです。
大人になると変に論理的に考えてしまうし、脳の順応性もやはり子供にはかなわないような気がします。
それにしても幼いながらにもすでに通訳というお仕事(?)をなさっていたんですね(笑。

>アキラさま
 ですね。参ります。
7. Posted by fumi   2005年11月09日 00:55
子供って…凄い!!
私も十分子どもですが、言語を覚えたりできる歳って、3〜4歳の間だって聞いたことがあります。
私も、その時にアメリカにいたら今も、英語がぺらぺらだったのかもしれません・…
しかし、その後日本に帰ってきて日本語だらけの生活をしていき、英語とは全く隔たれた生活を送っていたらきっと、英語も上手には喋れるようにはならないんだろうと思います。
だから、バウリンガルは・・・子供のほうがすんなりとこなしちゃったりするのかもしれませんね。 
8. Posted by さんぱつや   2005年11月09日 04:25
面白いお話ですね。(と言っていいものかなぁ)
普通、言語野といわれる脳の領域は左脳にあることが知られてます。
言語野を使うのは基本的に母国語の場合で、後で学んだ言語は言語野を使わずにどちらかというと記憶に関わる場所を利用しているようです。
お子さんのような場合って、どうなんでしょうね。
言語野が他の場合と比べて発達してしまうのかな?

>さんぱつや様
 どうでしょうね。学習という意味では右脳も関係しているでしょうし…。
9. Posted by chiemi   2005年11月09日 04:54
私の友人の多くは、海外で暮らしています。
ドイツ・カナダ・オーストラリア・フランス・・・・
それぞれ海外の学校では問題が余り無いようですが、日本の学校を考えると、難しいようです。
わたしなんか、「英語は話せて、ラッキーじゃない」と思いましたが、日本の教育は高度なので、日本語がしっかり出来ないと、勉強についていけなくなるのだそうです。
ドイツの友人の子が今年日本の学校へ編入しました。ドイツの高校で語学の問題で理解力が乏しいらしく、進級できないため、おばあちゃんの居る日本に来たのです。(その子と仲が良いので、別理由を聞いています。日本の芸能人やゲームが好きだからです。^^)
でも、ここでも会話は問題ないのですが、勉強の内容が全く理解できない。。。難しい漢字があまり読めない等。。。大変のようで、今ホームシックです。

>chiemiさま
 本当に言葉は大変ですね。
 軽く考えていると、子供に苦労をさせてしまいますから。
10. Posted by れっきゅん   2005年11月09日 10:19
初めまして〜♪
アキラさんのブログ「夕焼け通信」から、飛んできました。
「言葉」って大切なのですね。改めて思いました。
英語も日本語も自然に子供は覚える事が出来る。と軽く考えていた自分に反省です。
また伺いまーす!

>れっきゅん様
 こちらこそ宜しくお願いします。
11. Posted by サード   2005年11月09日 12:46
私は在日3世です。娘は4世になりますが、自分のルーツを知るためにも言葉はきちんと教えていきたいと思っています。

言葉は文化的なアイデンティティとも関連がありそうですね。

移民の子ども達はアイデンティティの確立で悩むことがありますが、ダブルの場合もそうでしょうか。

私の場合は葛藤の過程でより豊かな物の考え方が出来るようになったと思っています。


>サードさま
 考え方が豊かになるというのは理想です。
 また、二つの文化的アイデンティティ、これも結構大変ですね。
 気にしなければ、それで済んでしまうのかも知れませんが、
 それでは子ども対して、申し訳ない。
 なるべく双方の文化の中で成長してもらい、
 後に彼らが自然に感じてくれれば…と考えています。
 
12. Posted by ilovedesign   2005年11月10日 03:45
こんばんは。ワタシも旦那が台湾人なので、どの言葉で話そうか?はテーマですな。しかもワタシと彼は英語で会話をするので、子供が使う言葉の選択肢は3つある。いろいろそう言う環境の人に聞いてみたけど、みんなそろって飯村さんの取った方法をしたと言いました。一つの言葉で話しかければ、その人に話す時はその話し方をする、のだそうで。時に日本語、時に英語、とすると混乱をして母国語を無くす子供が育つそうで。まだ出産は先の話だけど、ワタシは多分日本語で話しかけるだろうし、そこがアメリカだったら、ベビーシッターは英語なんだろうし、彼は、中国語?なんか。。。大変そう。。(笑)

>ilovedesignさん
 大変だけど、
 実は、わくわくするようなことでもありますよね。
13. Posted by 飯村和彦   2005年11月11日 10:35
>ロコモーション@ミミ様

コミュニケーションの手段ですから、一つの言葉がきちん
とできれば、
もう片方はそれを補完する程度で十分という考え方の人も
います。
でないと、子どもに負担がかかり過ぎることもあります。
うちの子どもたちの場合は、
日本語と英語ほぼ同じレベルで読み書きできますが、
同じ年代の子どもの日本語、英語に比べると、
そうですね、だいたい1年分位、遅れているかなあ。
ともかく、ガリガリやらないようにしてますね。
14. Posted by 飯村和彦   2005年11月11日 10:35
>fumiさま

知人のお子さん(日本人)の中にも、
幼児期は英語を母国語のように操っていたのに、
日本に戻り、日本語の世界で日常を送っているうちに、
英語をうまく使えなくなった子がいます。
しかし、全ては考え方です。
英語を必要としない環境で生活をしていくのであれば、
それを母国語のように操る必要もない訳でしょうから。
でもさすがだなと思う点は、
その英語を上手く使えなくなった子も、
口の周り筋肉(舌も含めて)は、
まだ英語を話していたときの動き(?)を覚えているようで、
発音は「健在」でした。

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