東京story:図書館からの葉書東京story:黒田さんご夫妻の結婚披露宴

2005年11月15日

NY’90:サンドウィッチとバングラディシュ人



No.19
Keep your chin up!
まだ頑張ってね!
へこたれちゃダメだぞ!


訳あって悲しみに打ちひしがれているとか、
あることに何度も何度もトライしても、なかなか上手くいかない。
そんな人に対して、
「(大変だろうけど)まだ、頑張って!」
「へこたれちゃダメだぞ!」
と、励ましたり、元気づけたりする場合の表現。



エンパイアビル



サンドウィッチとバングラディシュ人
34丁目のMacy’sデパートの近くに、
「Blimpie」という名前のサンドウィッチ店があった。
安くて、ボリュームのあるサンドを売っているチェーン店で、
24時間営業。
酒を飲んだ後の、あのなんとも表現しにくい空腹感を満たすために、
頻繁に利用していた。

さて、
ニューヨークに住み始めて、
まだひと月も経っていなかったある日の夕方。
そのBlimpieで、ペッパーステーキサンドを買っていた時のこと。
店員のアジア系の男性に、突然話しかけられた。

「きみは中国人?それとも日本人か?」
と。それで、
「俺は日本人だよ」
と答えると、彼は、
非常に癖のある英語で、私になにか頼みごとをはじめた。

注意深く聞いていると、彼の言葉の中に、
「もしもし」
という日本語がはいっていて、
一所懸命電話をかける真似をしているのが分かった。

「親友が今、日本で働いているんだ。
それで、今晩、電話をすることになっているんだが、
俺は全然、日本語ができない。
だから、俺の代わりに電話をかけて、
友達を電話口まで呼び出してくれないか」

それが彼の頼みごとだった。
さらに、
「今晩11時に、あの電話のところに来てくれ」
といって、道端にあった公衆電話の方を指差した。

今にして思えば、難しい頼みごとでもないのだが、
まだニューヨーク生活の日も浅く、
色々なタイプの人たちと接する機会も、そう多くなかった時期のこと、
一瞬、考えてしまった。
「変なヤツだったらどうしよう」と。

その公衆電話があったのは、自分のアパートから、
歩いて5分とかからないところなのだが、
治安はといえば、決して良くない。
一応、「いいよ」とは答えたものの、いざ、アパートに戻ってしまうと、
夜、改めて外に出て行くのには少し抵抗があった。



ブリンピー



数時間後、しばし逡巡したあと、
意を決して(…大袈裟だが真実)待ち合わせの場所にいったのが、
夜11時04分。
この4分遅れというのが、そのときの私の心境をすべて物語っている。

するとどうだろう、
彼は、既に公衆電話の受話器を手にして立っている。
驚いた。
と同時に、「あー、きて良かった」
と心底思った。

もし、ぐずぐずしたまま、「えーい、止めておこう」などと思い、
その場に来ていなかったらどんなことになったのか。
バングラディシュ人の青年は、
「日本人はウソつきた!」
と心に刻み込むであろうし、
その後、
酔っ払って夜中にサンドを買いにいくこともできなくなったかもしれない。

運よく、日本で働く彼の親友、デージーにも電話が繋がった。
そのときの彼の表情の嬉しそうだったこと…。
デージーは、埼玉の鋳物工場で働いていた。
あとで聞いてみると、彼が真面目に仕事をするので、
その“御褒美”に、
店のオーナーが日本に電話させてくれたのだという。

バングラディッシュ人の青年は、
アメリカで、“グリンカード(永住権)”を取得することが夢だといった。
そのために彼は、
毎日、夕方5時から翌朝5時まで働いていた。
カンバレ!
Keep your chin up!!!!

(飯村和彦)





newyork01double at 11:26│Comments(13) ニューヨーク | カッコイイ英語

この記事へのコメント

1. Posted by 愛犬家   2005年11月15日 12:11
飯村さん、私のホヤホヤのブログに書き込みして頂き有難うございます。

私も飯村さんと同じ行動を取ったと思います。
まず疑い、迷い・・・でも気になってどうしょうもない・・・。
その時間に彼が来ているのを確認してから、決めよう・・・そう思って、やっぱり少し遅れて行きます・・・。

私も彼に同じ言葉を掛けてあげたいと思います。

>愛犬家さま
 そうなりますよね。
 今後とも宜しくお願いします。
2. Posted by かえで   2005年11月15日 12:48
見知らぬ、またなれない土地でだったら
色々、考えて躊躇しるところもありますよね。
でも結果がこうでよかったなってほっとしています。

>かえで様
 最初は、手探り。そのあとおずおずと足を動かして…。
 当時はそんな状態でしたね。
3. Posted by かずき   2005年11月15日 15:57
飯村さんに声をかけた彼の勇気もすごいですよ。
わたしだったらできずに諦めてたと思います
きっと何人かのアジア人に声をかけたんでしょうね。。
彼はグリーンカード取得できたんでしょうか・・?
4. Posted by りんりん   2005年11月15日 21:25
いいお話ですね。
バングラディシュの方のような
まっすぐに夢に向かって頑張る気持ちって
なかなか持てないですよね。
5. Posted by 飯村和彦   2005年11月15日 22:08
りんりん様
アメリカに夢を求めてきてる人たちは、結構強いですね。
ある意味、母国を離れ、第二の人生を「生き切る」覚悟のようなものがあるのでしょう。
6. Posted by 飯村和彦   2005年11月15日 22:16
かずき様
確かに、声をかけてきた彼の勇気も凄いですね。
残念ながら、その後、彼がどうなったのかは分かりません。
私の方が、ウエストサイドからイーストサイドの方に引っ越したりしてしまいましたから。
成功していると願いたいですね。もしかしたら、「家族」ができていたりして…。
7. Posted by 小鳥ちゃん   2005年11月15日 22:28
飯村さま

イイお話ですね〜。私は最近、道を歩いていて「25セントください」と声をかけられたら立ち止まって、できるだけ渡してあげるようにしています。以前は東京の癖で、誰に何を言われてもほとんど立ち止まったことなかったんですけど。そうしたら、先日、「1ドル札を25セントに崩してください」という人がいて、きっとどうしても電話をかけたりする急用があったんでしょう。恐らく昔だったら立ち止まってなかったから、ちょっと大人になった気分。それにしてもBlimpieの看板、昔は渋かったんですね。
8. Posted by 飯村和彦   2005年11月15日 23:19
立派です。
私、あのカップを持ったガチャガチャは、やっぱり苦手です。突然、長い手がスーッと出てくるようで、たじろいでしまうのです。
東京では、渋谷駅周辺に、「アンケートお願いします」といって声を掛けてくる、人の良さそうな中年女性が大勢いるのですが、こちらはあまりに頻繁なので、頭を下げてお断りしています。実は、どんなアンケート項目が並んでいるのか、結構興味深いのではありますが…。
9. Posted by TAKO母   2005年11月16日 02:51
行ってよかったですね。
でも・・・行くかどうかの判断って 難しいですよね。
行って 「しまった!」って思うこともあるかもしれない。。
それを判断できる力って・・・・・大切でしょうか。。。

読んでいて 最初ちょっとドキドキしました。
飯村さんの迷う気持ちが 伝わってきました。
・・・・でも ほんと今回は 行ってよかったですね。。

>TAKO母さま
 本当に、そう思います。ちょっとしたことなのですが…。
10. Posted by カメ   2005年11月16日 06:16
素敵なお話ありがとうございました。
こういう小さなエピソードを集めて、グレアム・グリーンのような
短編集、というのもいいですね。
基本的に、人を信じる、その人の生き方に関心を持つ、という
飯村さんの、暖かい人を見る目が好きです。
それがあるから、人との貴重な出会いやつながりが生まれるのだと
思います。
子どもたち(&猫ちゃん)へのたっぷりの愛情も素敵ですけど。
11. Posted by 飯村和彦   2005年11月16日 12:30
カメさま
自分が、おっしゃるような「暖かな目」をもった人間だとは考えたことはありませんでしたが、
「手」は暖かいですよ(笑)。
うちの子供たちなど、寒くなるといつでも、私の手にまとわりついてきます。
「父さんの手、あったかい!」
といわれて、悪い気はしませんけどね。
12. Posted by chiemi   2005年11月16日 17:17
「顎をあげて・・・」
下を向くな、、って言う事かなあ〜
こうやって覚えると、本当に英語って嫌じゃあないですね。
中学の英語教育って、こういう方が良いのではないかしら。。。「これがペンです」なんて、皆で合唱せずに。。。

こういう機会に遭遇した時、行く決心をするのは大変ですよね。
わたしも海外のお仕事を何回も経験させて頂いていますが、日本人(東洋)を嫌いな人は結構いますし、
私だったら、(女と言うこともありますが)電話の場所を此方側で指定させていただくかも。。。
13. Posted by 飯村和彦   2005年11月16日 19:06
>chiemiさま
 英語の方、そう言っていただけると嬉しいです。
 英語を覚えるために英語を勉強する…というのは私も苦手です。
 好きな事、興味をもてる事を知るために、
 たまたま英語が必要だったなら、それは楽しいですよね。
 ちょとした「記号」を調べるように、
 英語に向かえばいいのですから。

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