2006年01月23日

鏡の向こう側…心の青空を求めて!



ちょっと古いけれど、時には、こんな本を…。
『Nobody Nowhere』(Donna Williams 著)
…日本語版あり。
「自閉症だった私へ」(新潮社)…続編も出版されている!


自閉症少女、ドナ・ウィリアムスが鏡の中に見ていた世界とは?


グラセン


気違い、聾(Deaf) 、知恵遅れ、乱暴者。
幼少期から彼女には幾つものレッテルが貼られていた。
しかし、彼女は気違いでも知恵遅れでもなかった。
他者との接し方が分からない、
必要以上の他者の接近がどうしても耐えられない。

結果、彼女は自分の中に自分自身の世界を作り、
自分の世界の中で生きていた。

『自閉症とは何か?』

人はよく“自閉症”という言葉を使うが、
実際はそれがいかなる病気で、
どんな症状を伴うものなのかを正しくは理解していない。
更には、専門であるはずの精神分析医でさえ、
その実態をきちんとは把握していないという。

よって、自閉症児に対して間違った対応をしている場合も数多い。
この本は、自閉症少女本人が見てきた世界、味わった苦悩、
感じてきた対人間関係の苦悩を、
彼女自身が必死の思いで書き記した自伝である。

───では、自閉症少女、ドナが見てきた世界とはどんな世界だったか?

家族をも含む、他者の接近から逃れるためにドナが作りだした彼女の世界。
その世界に逃げ込んでいる時だけ、彼女は安心できたという。
幼児期にはすでに出来上がっていたその世界とは一体どんな世界だったのか。
また、そんな彼女だけの世界に立ち入る事が出来た数少ない人物、
彼らは何故その世界に招かれる事が出来たのか。

───自閉症少女、ドナにとっての他者とは一体どんな存在だったのか?

土足で彼女の世界に勝手に入りこむ他者たち。
それは、母であり兄であり、
また、彼女とCommunication を持とうとする全ての現実世界の人間たちだった。
彼女には彼らが話す言葉さえ恐怖の対象であり、
それが彼女に向けられた途端、彼女は彼女の世界に逃げ込む。

また、そんな他者と付き合っていく為に彼女が作り出した、
キャロル、ウィリーなる人物像。
彼らは彼女との関係の中でどんな役割を果たしていたのか?

───自閉症少女、ドナが作り出した自分以外のもう二人の人物の意味とは?

明るい性格のキャロルが上手く他者と付き合い、
現状認識に長け時に暴力的なウィリーが、
必要以上にドナに接近してきた他者を払い退ける。
そして、ドナはまた彼女の世界に閉じ籠もる。

しかし、自閉症少女ドナは多重人格ではない。
なぜなら、そこには常にドナがいた訳だから。
増してや、精神分裂患者でもない。


パーキングに男


───自閉症少女、ドナにとっての現実世界とは?
───自閉症少女、ドナが自己としてのドナをどう見つけだしていったのか?

他者との意志疎通が出来ないドナ。
母親を含む、まわりの人間は彼女を“気違い”と呼んだ。
現実の世界とドナの世界の間にある壁。
安息できる自分の場所を求めて少女は転々と彷徨う。

ある時は道端に住処を探し、
またある時は男に身を任せる。
笑顔で気立てのいいキャロルと用心坊的存在のウィリー。
ドナはいつもこの二人の影に隠れ、なかなか表に出たがらない。
“普通の人間”、“尊敬される人間”に対する憧れ、
自分が他の人と何か違っていると気づいた彼女は、
“普通(Normal) ”を渇望し始める。

苦しみ悩み、時には自分を傷つけながら、
それでも彼女は、自活して高校を卒業し、大学へと進んだ。
自分自身を見つける事、
自分の世界と現実の世界との架け橋を見つけること…
ドナは必死で自分を見つける旅にも出た。

そして、25歳の時、彼女は“Autism”という言葉を発見した。
Autism (自閉症) …
勿論それを理解する事が全てではなかったが、
彼女はその言葉の中から、
現実の世界に架かる橋を見つけるチャンスを得たのだった。


ドナさんと共に、自分探しの旅にでる。
良くも悪くも、
きっと、その人なりの発見があるはず…。

(飯村和彦)

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newyork01double at 10:01│Comments(23) 気になるBOOKs | 取材ノートより

この記事へのコメント

1. Posted by かえで   2006年01月23日 20:06
自閉症も幅広くそれぞれ症状が違いますよね。
自閉症である本人が書かれた本なのですか?

2. Posted by やっとこ   2006年01月23日 20:39

ドナ・ウィリアムズさんの著書
「自閉症だった私へ」というような題だったと
記憶しています。
その「自閉症だった私へ」でしたら、読んだことが
あります。

そこには、想像を絶する世界がありました。
「自閉症」という訳語は、まちがいだと
思いました。この訳語から、かなりの誤解を
されている障害だと思います。
「Autism」をそのまま音訳すべきだった
のではないかと私は思いました。

最近では、「Autism」の方々の中で
本を出される方がぼちぼち出てきて、少しずつ
ですけれども、「Autism」の方々の世界を
かいまみることができるようになってきましたね。

飯村さんのことですから、もう読まれたかも
わかりませんけど、最近、私は、
「自閉っ子、こういう風にできています!」
ニキ・リンコ、藤家寛子著 を読みました。
この本は、私のお薦めです。私は驚きの連続でした。
3. Posted by かえで   2006年01月23日 20:47
>やっとこさん。ニキ・リンコさんのは読みました。
 一まとめに考えると 誤解が出てくるんでしょうね。
4. Posted by セラビー   2006年01月23日 21:27
飯村和彦さん,こんばんは♪ コメントありがとうございました。
いつも飯村和彦さんのブログ,楽しく拝見させていただいております。
JAZZ/FUSIONの名盤をお探しの際には,また当ブログにお立ち寄りくださいね。
5. Posted by 飯村和彦   2006年01月23日 21:34
>かえでさま
10数年前の本ですが、
ご本人の体験をもとにした本です。
6. Posted by 飯村和彦   2006年01月23日 21:42
>やっとこさま
「自閉症だった私へ」…でした。
続編も出ているようですね。今調べ直して、本文の方にも加筆しておきました。ありがとうございます。
私がこの本を最初に読んだのは、まだNYに住み始めた頃です。だからもう15年も前。出版早々大反響の本で、辞書を引きながら必死に読みました。
やっとこさんのおっしゃる通り、「Autism」のままの方がぴったりしますね。
7. Posted by 飯村和彦   2006年01月23日 21:47
>セラビーさま
ありがとうございます。
「JAZZ」、好きなのですが、専門的なことはまったく分かりません。少しづつ、「知恵」を蓄えていきたいと思っているところなので、こちらこそ宜しくお願いします。
8. Posted by may   2006年01月23日 21:48
はじめまして。カメさん・satoさんの所で時々御一緒させていただいているmayです。時々立ち寄らせて頂いていました。このブログの空気感がとっても好きです。

私の周りには 自閉症または自閉的傾向のある子・アスペルガーの子など 様々な子がいます。本当にどの子も可愛い子ばかりです。
マイナスに受け取られがちな障がいですが、少しでも彼らの世界を知りたいと思っています。独特な世界を持っている子たちですが、脳障がいという事を踏まえた上で 彼らを一人の人間として認め、その世界を少しでも共有出来たらと思います。
普通っていう定義がなかなか分かりにくい世の中、私も自分探しの途中です。。。

9. Posted by 飯村和彦   2006年01月23日 22:01
>mayさま
はじめまして。宜しくお願いします!
「Autism」の子供たちは、我々凡人には計り知れない、素晴らしい才能をもった子も多いと聞きます。
分からないこと…、沢山あり過ぎますね。


10. Posted by chiemi   2006年01月24日 00:17
心に病を持たない人はいないと思います。
強がって、そうした自分を認めない弱さを、
持たないようにしたいです。
私だって、上手に人と向き合えない自分も持っていますし、
叫びだして、何もかも終わりにしたい衝動に駆られる時もあります。
弱い自分を素直に認め、向かい合うことは、凄くエネルギーの要ることだと思います。
そして、それが自然と出来る人を、素敵だと思います。
最近、やっと少しずつ時間が取れるようになって来ました。
といっても、週末は忙しくなりそうですが、
以前ほど、先が見えない仕事でもなくなりました。
ところで、新しいURLで、お邪魔しています。
もし、お時間が取れましたら、覗いてください。
ただ、まだまだ、構築中で、
家で言うなら、骨組み作りをしている段階です。
出来上がった家を見るのも良いですが、
作る段階も、面白いです。
11. Posted by 小鳥ちゃん   2006年01月24日 03:08
「自閉症だった私へ」、読んだことがなかったので、早速アマゾンで調べてみました。
私も小さいときは軽い自閉症だったのだと思います。
少なくとも親はそういって悩んでいましたし、
様々な病院へ連れて行かれた記憶があります。
子どもが、一般社会の機能を理解し、参加する、というのは、
人それぞれにやり方も違うでしょうし、
馴染んでいく時間も違うんでしょうね。
ひとりひとり環境も違うし。
結局大人になってから、一応「普通の人」の役も演じられるようになったおかげで
あまりきちんと自分が自分の中に閉じこもってしまうことを
調べたりしていませんが、今でもたまに弊害がでるときがあります。
最近、ある人から「ちゃんと解決したほうがいい」と言われましたが、
まだ、どうやって解決すべきなのか、果たして解決したほうがいいのか
決めかねている状態です。
手始めにこの本を読んでみようと思います。
12. Posted by 明るい空   2006年01月24日 08:42
心の問題にはとても興味がありますので、是非、この本を読んでみたいと思います。良い本を紹介して頂きましてありがとうございます。
13. Posted by むーみん@ママ   2006年01月24日 10:51
自閉症少女本人が、皆にもっとちゃんと理解してほしいと
必死の思いで書いたなんて、すごい勇気とパワーだと思います。
うちの息子は、最近自分の世界をつくっているようで
その世界の事を話してくれるのですが、
これも同じような現象であり、ストレスから逃げる場所なのでしょうか?
自閉症とは、そういわれる人たち以外でも、身近な所に
あるのかもしれないと、考えなおしてしまいました。
14. Posted by 飯村和彦   2006年01月24日 11:06
>chiemiさま
…弱い自分を素直に認め、向かい合うことは、凄くエネルギーの要ること
同じ思いです。
私などは、弱っているときほど虚勢を張って、その場をしのごうとしてしまいます。
自分をきちんと見つめること…、難しいです。
15. Posted by 飯村和彦   2006年01月24日 11:13
>小鳥ちゃんさま
…「ちゃんと解決したほうがいい」
といわれても具体的にどうすれば…と考えると難題ですね。
確かに、「解決する」ことで何かが変わるのでしょうが、それが良いことなのかどうかは不明ですし…。
ありのままの自分をそのまま受け入れる、私はそう努めているつもりですが、これも難しい。一方、自分と他人との距離の保ち方もまた、厄介。
見渡すと、容易でない世界が広がっている気もするし…。
16. Posted by 飯村和彦   2006年01月24日 11:16
>明るい空さま
私自身にとっては、ドナさんの本は、衝撃でした。
なぜかと言えば、彼女の幼いころの記憶が、自分の記憶を合致する部分があまりにも多かったからです。
是非、読んでみてください。
17. Posted by 飯村和彦   2006年01月24日 11:21
>むーみん@ママさま
うちの子供たちも、特に娘は「自分の世界」に浸っているように見えるときがあります。
けれども、それは成長の一過程ではないのでしょうか?自己が確立してくるにつれ、そのような世界が子供の中にできあがるのではないかなあ…と思っています。学問的な根拠はないのですが…。
18. Posted by 小鳥ちゃん   2006年01月25日 05:48
飯村さま、
そうなんです、具体的にどうするのか考えあぐねているところです。
「解決したほうがいい」と言われた当初は抵抗しましたが、
最近は、少し落ち着いて考えてみようかという気になってます。
自分を受け入れることに関しては苦じゃないんですが、
やはり自分と他人の距離の保ち方が難しいですね。
自分でもまだ「普通の人を演じてる」部分があるので。
19. Posted by 飯村和彦   2006年01月25日 11:01
>小鳥ちゃんさま
「普通の人を演じている」
ということでいえば、私自身も同様な気がします。
好きな言葉ではないのですが、
「他人と折り合いをつけながら…」日々の生活を送っています。この折り合いをつける行為が、曰く「普通の人を演じる」ということなのかなあ…と考えたりも。
20. Posted by カメ    2006年01月25日 13:53
コメント遅くなりましたが、飯村さんがこの本を記事でとりあげ、
詳しく解説してくださったこと、本当に嬉しく思います。
そして、皆さんがとても真剣に受け止め考えてくださったり、
やっとこさんのように、さらに参考になる情報をくださったり、
ありがたいなーと思います。・・・って、まるで自分が自閉症の子の
親でもあるかのような、書きぶりですが、少しばかり自閉症の子や
お母さんたちとお付き合いがあるだけで、実は、私など、
何もよくわかっていなかったんだなーと改めて思い知り、
もっともっと知りたいと思うし、
飯村さんも書いておられるように、自分とは関係ない、特別の話と
思うのでなく、その中から、普遍的な人間として大切なことを
読み取れる、感じ取れる人間になりたいと思います。
その点、しょうがいのある子の親でなくても、こういう本に心をとめ、
多くのことを感じ取られた飯村さんの心の深さに頭が下がります。
21. Posted by 十一月うさぎ   2006年01月25日 20:39
お久しぶりです、十一月うさぎです。
職場(小学校)で十日前から問題が発生し、少し精神的に参っていました。
自分のブログの更新さえ、ままならない状態でした。
発達学級の教員の立場として、このようなテーマのブログ記事を書いて下さった事、嬉しく思います。
健常者は、自閉症問題に目を背けたがるものです。
わたしのブログは訪問者が少ない弱小ブログですけど、
貴ブログでこのような話題を提供してくださると、多くの人に訴える事ができるでしょう。
また、訪問いたしますね、失礼します。
22. Posted by 飯村和彦   2006年01月25日 22:43
>カメさま
…自分とは関係ない、特別の話と思うのでなく、その中から、普遍的な人間として大切なことを読み取れる、感じ取れる人間になりたい。
   ↑
まったく同感です。
自分もそうした人間たるべく、努力しているつもりですが、そう簡単ではありませんね。精進です。
23. Posted by 飯村和彦   2006年01月25日 22:51
>十一月うさぎさま
体調の方はいかがですか? 精神的にだけではなく、体の方も悲鳴をあげているのでしょうね。
そんな中、このブログを読んで頂き、感謝のことばもありません。
ゆっくり、ゆっくり…。それが一番の薬だと思います。

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