最高級ケーキのような果実光る猫の目…サイボーグだ!

2006年03月08日

ニューヨーク大学の英語講座



No.32
Wrap it up! (=Give it up!)
そろそろお仕舞いね。
早めに切り上げてよ。
うるさい、もう止めろ!


例えばオフィスでのミーティング。
プレゼンの持ち時間は5分なのに、
だらだらと、
10分近くも話し続けている人物がいたとする。
そんなときに、「wrap it up!」(早めにまとめて!)
にもかかわらず、
同じような調子で延々と話し続けるようだと、
「Give it up!」(もう止めろ!)


ニューヨーク大学の英語講座

ニューヨークに住み始めた頃、
ワシントンスクエアパークの傍にある、
NYU(ニューヨーク大学)のAmerican English講座に通っていた。
日本で教えられた“英語に似た言葉”が頭に入っていた分、
“使える言葉”としての英語へのアプローチには苦労した。
多分、
それまでまったく英語教育を受けていない他国人より、
上達が遅かったのではないだろうか。

「10年にも及んだ、日本での英語学習はなんだったのか!?」

悔しいというより、
情けない気分で、“使える英語”の習得に励んだ。


ワシントンスクエア


とはいっても、
久しぶりの“学生生活”は楽しいもの。
仕事の合間を見ての“ながら学生”ではあったが、
充実していた。

なかでも、夜のコースは結構面白かった。

教室に集うのは、
ほとんどが、「おっさん、おばさん学生」。
その多くは、日中、
なんらかの仕事についている方々だ。

当時、チャウシェスク大統領の処刑で、
一躍有名になっていたルーマニアからは、
暢気で酒好きなエンジニアのおじさん。

フィリップ・モリス(たばこ会社)で、
事務の仕事をしていた陽気なプエルトリコ人女性もいたし、
マンハッタンでLaundry store(洗濯屋)を経営していた、
韓国人移民の女性もいた。

雑多な人たちが、
雑多な国から集まってきているという感があり、
彼らを見ているだけでも充分楽しめた。

私のクラスでは、毎回、
一人の“学生”が20分間スピーチを行い、
その内容についてみんなで話し合う…
というスタイルがとられていた。


マンハッタン人々


ある日のこと。
目がクリクリと大きく、
いつも頭の上に白いキャップ(ヤマカと呼ばれる)をのせている、
ユダヤ人のおじさんがスピーチを行なった。
彼のテーマは、「ユダヤ教」。

ユダヤ教がいかに完成された宗教であるかを、
とくとくと説いていた。
無論左手には、彼がいつも持ち歩いている“神の本”。
しかし、
その分厚い本を振りかざしての大熱弁は、
とどまるところを知らず、
放っておけば、一晩中でも話していそうな勢い。
おまけに、
粘着質とでもいうのか、聞いていて疲れるほどだった。

これには女性教師もまいったらしく、
うんざりした様子で口を挟んだ。

「Please try to wrap it up!」
(そろそろまとめて下さい)

ところが、そのユダヤ人のおじさんはどこ吹く風…。
スピーチは、
ユダヤ教における男女の権利に突入していった。

夫婦が離婚する場合、
「夫の方からは妻に離婚の申し出ができるが、
妻からはできない」という、
我々にしてみれば「不平等」に思えることを、
「男女平等」だとして、
その理由を“神の本”に基づいて延々と説き始めた。

勿論、
それぞれの宗教には、きちんとした考え方がある。
それは否定すべきことではない。
けれども、
そのおじさんは、話が長過ぎたのだ。

元来、ユダヤ人の場合、
話が長くなる人が多いのだが、
やはり、程度というものがある。

結局、
教師の「Wrap it up!」の忠告をよそに、
おじさんのスピーチは40分にも及んだ。

「Give it up!」(うるさい、やめてよ!)

とでも言いたげな教師の表情が可笑しかった。

その女性教師は、
家にドブネズミが現われるたびに捕まえては、
まるでリスでも飼うようにカゴで育てるという、
妙な趣味の持ち主。
しかし、そんな彼女でも、
こと宗教に関しては、
うまく議論の器に収めることはできなかった訳だ。

色々な人が集い合うニューヨーク。
それはそれで愉快だが、
ときに、思わぬところで立ち往生。
まあ、
それら全てを受け入れないと、
やっていけない所なのだろう。

rankingひと押し、ご協力を!

(飯村和彦)


newyork01double at 11:42│Comments(4) カッコイイ英語 | ニューヨーク

この記事へのコメント

1. Posted by リョウ母   2006年03月08日 16:16
ずっと昔 「巨泉の使えない英語」という番組が
ありました。
大橋巨泉さんが司会で とってもおもしろかったです。
使える英語と 使えない英語があるのですね。
英語は苦手です。
英検3級止まりなんですよ。
2. Posted by 飯村和彦   2006年03月08日 19:39
>リョウ母さま
使える英語=伝えようとする英語
…というのが私の実感です。
どんな形であれ、伝えようとすれば伝わるもの。
英語という言葉だけでなく、表情や動作、全てを総動員すればOKです。
自分の経験では、
学校で習ったように、英語を「正しい文法で綺麗に話す」ことにこだわっているうちは、上達しませんでした。
3. Posted by さんぱつや   2006年03月09日 05:10
アメリカって、

・・・などと巨大な国をひとくくりにするのはあまり正しいことではないのかもしれないですが・・・

僕は、あまり好きな国ではありません。
ただ、時折、妙な寛容さにびっくりすることがあります。
その寛容さの背景には雑多な人種がともに暮らしているということがあるのでしょうね。

4. Posted by 飯村和彦   2006年03月09日 10:37
>さんぱつやさま
ブッシュ大統領は、好きではありませんが、アメリカ人の中には、惹かれる人たちが大勢います。当たり前といえばそれまでなのですが、その惹かれる理由は、「懐の深さ」ですね。「寛容さ」と同じなのかもしてません。何かあったときに、軽く「It's OK!」といって笑ってくれる、そんな人が多いように思えます。

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