米国・「魂の歌」の巨星たち「○○」の耳は“ラマ”の耳…?

2007年09月10日

原爆開発物語・「神の火を制御せよ」



史実をベースに、
マンハッタン計画を「物語」に仕上げた、
ノーベル賞作家、パール・バックの作品。
1959年に書かれたものなのに、
何故か、
これまで日本語訳は出版されていなかったという。


神の火を制御せよ パール・バック


苦悶しながらも、
原爆開発に邁進せざるを得なかった科学者たち。
激しい自己矛盾。
けれども、戦時下の狂気には抗えなかった。

タイトル(邦題)には、
「神の火を制御せよ」とある。
しかし、残念ながら、
現実の世界は、
最悪の道筋を辿ってしまった。

この作品は、フィクションである。
だから、
実際のマンハッタン計画には存在しない科学者を主人公に、
物語が進行する。
その意味では、この作品を読んだ後、
原爆開発の詳細を忠実に記した本に目を通す必要があるだろう。

その上で、
パール・バックが、
架空の登場人物たちを通して訴えたたかったことを、
じっくり考えてみる。
すると、
人間が神の火を制御することなど、
到底不可能であるという現実を再認識させられる。

かつて、
テキサス州にある核兵器処理施設を取材した。
そこでは、ボーリングの玉ほどの大きさでしかない、
ミサイル核弾頭の処理が行われていた。
注意深くミサイルから取り外された核弾頭は、
処理後、特性の容器に収められ、
地中深くに埋められる。
そう、
それは“地中に埋められるだけ”でしかない。

また、数年前には、
全米に点在する核施設を回った。
例えばワシントン州ハンフォード。
長崎原爆に使用されたプルトニウムが製造されたプラントは、
赤土の荒野に現存していおり、
付近一帯(…といっても広大)は、
今でも、放射性物質で汚染されたままである。

戦時下の狂気が生み出した“神の火”は、
今尚、人類を脅かせ続ける。

核兵器を持つ国がある。
その保有を公には隠している国もある。
さらには、これから核兵器を持とうしている国もある。
“愚か”としか言いようがない。
パール・バックの作品を読むと、
改めて、その愚かさに激怒するに違いない。


(飯村和彦)


newyork01double at 12:44│Comments(8) 気になるBOOKs | 放送番組

この記事へのコメント

1. Posted by NORY   2007年09月11日 22:50
本当に痛ましい事件から6年。
もっと前のことのように思うのは
NYを訪れてもグランドゼロ付近にしか名残がないからでしょうか。
NYだけの問題ではなく平和を当たりまえと思える世界になりますように…
2. Posted by heidi   2007年09月12日 08:32
5 補足:
この邦訳が出版された直後に、朝日新聞の 菅野俊秀氏から、その通説を破る大変面白い貴重な情報を得た。実は、この原爆開発計画には、(エンリコ・フェルミの弟子である)ジョアン・ヒントンという女性物理学者が参加していたことが、数年前に明らかになっていた(詳しくは、 朝日新聞の2000年9月21日の夕刊に掲載された記事を参照されたし)。

3. Posted by heidi   2007年09月12日 09:03
5 彼女(当時24歳)は、1945年7月16日の「ゼロ地点」での(史上初の)原爆実験に立ち会っていた。その3週間後に、広島と長崎に原爆が米国政府により投下されて、多数の日本市民が無差別的に地獄の苦しみを味わったのを知って、酷いショックを受け、ロス・アラモスの原子力研究所を直ちに立ち去ったばかりではなく、科学すること自身に疑問を感じ始め、戦後間もなく(1948年に)米国を後にして、中国大陸に渡リ、僻地で酪農業にたずさわりながら、毛沢東の人民解放戦線に加った。毛沢東の死後、北京の郊外で夫と共に酪農業を続けて
2003年に夫が他界後も、独りで酪農業を続け、現在85歳ながら(反核)平和運動のために精力的に活動している。
4. Posted by heidi   2007年09月12日 15:05
5 彼女は今でも「(降伏寸前だった)日本に原爆を落とす必要は全くなかった」と 確信している。従って、彼女がこの小説で「日本への原爆の使用に反対する7 0名の科学者による嘆願書」に署名した良心的な科学者「ジェーン」のモデルになっている可能性が極めて高い。

しかしながら、ジョアンはパール・バックには一度も会ったことがないし、原書「Command the Morning」も読んだことがないそうです。そこで、原書を彼女宛てに最近、送りました。私は、この夏3か月、米国のボルチモアにあるメリーランド大学薬学部に客員教授として滞在していましたが、そのホストである (北京出身の) 羅遠 (ルオ ユアン) 教授は、なんとジョアンの昔からの知友でした。ジョアンの娘カレンとユアンは、(北京の) 大学時代、寮のルームメート同士だったそうです。この世は意外に狭いものです。
5. Posted by 飯村和彦   2007年09月14日 11:37
>heidiさま

興味深い「補足」、
ありがとうございます。
マンハッタン計画の背景には、
まだ知られていない事柄が、
数多くあるのでしょうね。
取り急ぎ、感謝の意を込めて。
6. Posted by Heidi   2007年12月31日 08:15
5 北京からジョアン・ヒントンさん (86) が息子のビルと一緒に、この夏、日本を
訪問する予定という情報を、ボルチモアの友人(羅 遠)から最近メールで聞き
ました。詳しい訪日日程が決まりましたら、改めてご連絡しましょう。広島や長
崎を訪ね、被爆者たちに初めて面会すると共に、東京でメディアや邦訳の出版社
を交えて、講演会のようなものを、できれば開催したいと思っています。
7. Posted by 飯村和彦   2008年01月12日 17:35
>Heidiさま

ご連絡、
ありがとうございます。
その際は、ご一報を…。
8. Posted by Heidi   2008年08月25日 17:42
原爆を作ったトップ女性科学者2名の戦後

http://charlie19420.blogspot.com/

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