報道における「匿名性」の問題人生が劇的に変わった瞬間〜自宅出産に立ち会うということ

2017年02月06日

トランプ的な行為・行動を、「トランプる(Trumple)」と呼ぶことに!



明らかなウソを平気でまくし立て正当化する
意見や考え、主義主張の異なる人と建設的な議論ができない
相手の気持ちを踏みにじる
気に入らない相手には激しく個人攻撃をする

そんなトランプ的な行為全般について使える言葉を思いついた。
日本では、ある人物名の最後に「る」をつけて、
その人物的な行為を表す俗語として使ったりするけど、
この「トランプる」がいいと思ったのは、
「トランプる」を英語で「trumple」とした際の語感と、
その語感から思い浮かべる意味だ。

「trumple(トランプる)」そのものは僕の造語だけれど、
実は英語に「trample」という単語がある。
うちのアメリカ人の奥さんによると、
「trample」は「〈〜を〉どしどし踏みつぶす。〈〜を〉踏みつける。
〈人の感情などを〉踏みにじる」
という意味だから、
造語の「trumple(トランプる)」の意味に似ていて語感もいいとのこと。
「tr」のあとの「u」と「a」が違うだけだから、発音も近いわけだ。
このところ機会があれば積極的に使用している。

そんなトランプがアメリカ大統領に就任して2週間が過ぎた。
イスラム圏7か国出身者を入国禁止にした大統領令はじめ、
この間にあったことは日本でも盛んに報じられているようなので、
ここで細かく紹介するまでもないはず。

「就任式に集まった観衆が過去最高だった」(明らかなウソ)と強弁したり、
大統領選挙では「300万人の不法移民が不正投票した」
と何の根拠もなくいい張って調査を命じたり。
得票数でヒラリーに300万票近くの差をつけられて負けた事実が相当悔しいらしい。
支持率も40%ちょっとで、政権発足直後でありながら驚くほど低い。
いまさらながらこれでよく大統領になれたなと思ってしまう。
また、オーストラリアの首相との電話会談の際、
切れて電話を叩ききった事実などは、彼の本性がそのままでた感じだ。

大統領選挙のときから現在にいたるまで、
やはり一番気になるのがトランプの「ウソ」だ。
枚挙に暇がないとはまさに彼のウソのことで、
明らかなウソでも権力をかさに事実だと大声でがなりたてる。
当然ながら彼はウソを認めたりはせず、
逆にウソを指摘した方を「ウソつき」だと一方的に罵倒、
恫喝まがいの発言さえいとわない。
絶対子どもにはまねさせたくない態度だけど、
それを絶対的な権力を持つ大統領やその側近がしているんだから、
常識的に考えれば、いまのアメリカ政治(トランプ政治)は、
既に破綻しているといってもいいのかもしれない。

分かりやすい例が、ご存知トランプのメディア対応だ。
お仲間メディア(FOXニュースなど)には愛想よく、
自分に批判的だったり、都合の悪い事実を伝えるメディアにたいしては、
「インチキだ」「フェイクニュース(偽ニュース)だ」
とまくし立てて聞く耳を持たない。
CNNやニューヨークタイムス、
ワシントンポストなんかに対する敵愾心は尋常じゃない。





NYT本社
(photo:kazuhiko iimura)



そんなトランプに嫌われているニューヨークタイムスが先月、
「偽ニュース」をでっちあげたある人物に関する記事を載せた。

大統領選挙が終盤に差しかかった頃、
【オハイオ州で投票箱に入った大量の不正ヒラリー票が発見された】
というウソの記事を書いた男性についてだ。
この捏造記事は、当時またたくまに広がり、
トランプ本人も鬼の首でもとったように、
無思慮にその「偽ニュース」をツイートしてばんばん拡散させた。
“その後の顛末”まで仔細にフォローしていない人の中には、
今でもこの「偽ニュース」を本当にあったことだと信じている人が多いかもしれない。
「偽ニュース」をでっち上げて広げた動機についてその男性は、
ニューヨークタイムスの取材に「金のためにやった」と答えている。
そんな行為がいい金になるのがネット社会の負の側面なのだ。

さらにある時点でそれが偽ニュース、ウソ情報だと分かったとしても、
そこに書かれている内容が自分に都合よかったり、
自身の考えに近いものであったりすると、
「いいね」を押したり「シェア」したりする人も少なくないだろうし、
もしかすると、「そんなこともあるかもしれない」、「きっと本当なんだ」
と勝手に思い込むようになるのかもしれない。
特に自分の支持する権力者のものいいに迎合するような人たちは、
その傾向が強いんじゃないか?

その上にネットの世界では偽ニュースやウソ情報が、
削除や訂正されずにのそのまま残ってしまうことが多々ある。
試しに関心のあるテーマでそれなりに事実関係をつかんでいる事柄について、
幾つかキーワードを打ち込んで検索してみよう。
結構な数の事実誤認、ウソ情報、根拠のない噂話がでてくるはずだ。
でもそれがウソやインチキだと分かるのは、あなたがそのテーマに関して詳しいから。
そうでない人や物事の真偽についてあまり検討を加えたりしない人は、
そこに書かれている内容がウソか本当なのか、なかなか判断できないに違いない。

「偽ニュース」や「ウソ情報」は昔からあったものだけれど、
いま僕たちが直面しているそれはかなり厄介な代物なのだ。

トランプ政権を例にとれば、そんな偽ニュースやウソ情報を
トランプ本人はじめ、報道官ほか政府高官までがずる賢く悪用している訳だから驚く。

例えばトランプの顧問で、就任式に来た観衆の数について、
「もう一つの事実」という訳のわからない発言をして、
物議をかもしたケリーアン・コンウェー氏。
今度は米ケーブルテレビ局(MSNBC)の番組で、
実在しない「イラク人過激派による虐殺事件」について語り、また問題になった。
ご丁寧にも今回は、
「これまで報道されていないから多くの人は今まで知らなかったはず」
とまで言ってのけた。
問題を指摘されるた彼女は後にツイッターで釈明したが、
そんな彼女のツイッターをいったいどれだけの人が見るというのか。

影響の大きいメディアで自分たちに都合のいいウソの情報を流して、
間違いを指摘されたら個人のツイッターでしらっと訂正する。
けれども流された情報の絶対量は断然ウソ情報の方が勝り、
結果少なくない人がウソ情報を事実として受け止め続ける可能性が高くなる。

そもそもが「もう一つの事実」ってなんだ?
ふざけた話だけど、こうして一つの表現としてあちこちで見かけるようになると、
そんな訳の分からないものいいまでいったん立ち止まって考える必要がでてくる。
まったくもって嫌な現状だ。





反対集会アマースト大学
(トランプ大統領令反対集会 アマースト大学/ photo:kazuhiko iimura)





極めつけはトランプお得意の個人攻撃だ。
イスラム圏7か国出身者の入国を禁止した大統領令について、
その一時差し止めを命じたジェームズ・ロバート連邦地裁判事を攻撃。
「この、いわゆる判事の意見は本質的にわが国から法執行というものを奪うもので、
ばかげており、覆されるだろう!」
とツイッターに投稿したのだ。
法の精神(司法の独立)を疎んじているとしか思えないトランプに、
法執行云々を語る資格があるのか?

さらに6日には、「なにか起きたら判事のせいだ」とまでいい放った。
とても大統領の言葉とは思えない。
判事に対する個人攻撃は前代未聞で現職大統領としてはほとんど前例のないことらしい。
トランプは、大統領選挙期間中にも「トランプ大学」詐欺疑惑をめぐり、
訴訟を担当していた判事を「メキシコ人」と呼んで人種差別だと批判されたけど、
大統領に就任してもそのままな訳だ。

そんなアメリカ大統領トランプと日本の安倍首相の首脳会談が開かれる。
いったいどんな展開になるのだろう。
ニコニコ笑っていても、意に反することが持ち上がれば、
あっという間に豹変して激高するトランプ。
そんなトランプ個人やトランプ政権を見るいまの世界の眼は極めて厳しい。
にもかかわらず、きちんと言うべきことを言わないまま、
巷間伝わっているようにエアフォースワンに同乗してフロリダまで赴き、
一緒にゴルフまでしてしまうのか?

そんなお気楽な映像が世界中に発信されると思うと恥ずかしいし、
アメリカ人の多くはきっと“いったいどんな神経をしているんだろう”
と白い目で見るに違いない。
それよりなにより、
「トランプ大統領と安倍首相は同類だ」
とテロを企む連中は確信するだろう。

これからアメリカという国はどうなってしまうのか。
分断社会、モラル低下、もろもろの差別…。
ウソを言っても大声でまくし立てれば、
何でも通ってしまうような社会になってしまうのか?
(それが「強いアメリカ」なのか?)
うちの奥さんは、大統領選挙の結果を知ったあと体調を崩した。
ショックというよりも、
これからアメリカで生活していくことが「とっても怖い」からだと。
不安ではなく「恐怖」なのですね。
たぶん、トランプ的なものの考え方に対して嫌悪感を抱いている人の多くは、
うちの奥さんと似たような精神状態だと思う。

50年以上アメリカ人をやってきて、
この地にずっと住んでいる人間がひりひりと肌で感じる怖さ。
これから先何年か(そんなに?)その怖さを感じながらこの地で生活していくこと。
それは日本人の僕なんかには到底感じられない皮膚感覚で、
長いことアメリカに住んでいても、
決して分からない類のものなんだろうなあ…と思う。

こうしてトランプについてつらつら書いているとかなり重たい気分になる。
だからという訳じゃないけれど、
最後にかなり笑える「フェイク新聞」を紹介しよう。
約30年前、初めてニューヨークに住み始めた頃、
その並外れた馬鹿馬鹿しさがおかしくて購入していた、
「National Enquirer」なる新聞(?)だ。




タブロイド
(photo:kazuhiko iimura)



記事の内容はといえば、「その子は、お父さんにそっくりだった!」
として紹介されている「人面馬(?)」の記事だったり、
墜落したUFOから「宇宙人の赤ちゃんが“生きたまま”発見された」というもの。
さらには、407ポンド、つまり約185キログラムもある、
「世界一大きな赤ん坊」の話まで。
ともかく、
いったいどこからそんなアイディアが沸いてくるんだろうという代物ばかりだ。

この新聞(?)が、いま世界中で問題になっている「偽ニュース」とは、
まったく質の異なるものであることは明らかだけれど、
これがスーパーマーケットのレジ横なんかで堂々と販売されているんだから
少なからず驚いたもの。

でも、いまある「虚構」をウリにした「虚構ニュース」などと違って、
この「National Enquirer」は、
“内容は虚構です”とも“ジョークです”とも表明していないから、
なかには「偽ニュース」とは思わないで記事内容を信じる人もいるのか?
30年前は“ほぼ”そんなことはないだろうと考えていたけれど、
今だと、もしかするとこんな新聞(?)でさえ、
情報ソースとして利用している人がいるかも知れないと思えてしまうから怖い。
それだけ世の中がウソと偽ニュースに汚染されてしまっているということなのか?

(飯村和彦)




newyork01double at 14:03│Comments(0) 取材ノートより | マサチューセッツ州・Amherst

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