テロとの戦い

2017年02月06日

トランプ的な行為・行動を、「トランプる(Trumple)」と呼ぶことに!



明らかなウソを平気でまくし立て正当化する
意見や考え、主義主張の異なる人と建設的な議論ができない
相手の気持ちを踏みにじる
気に入らない相手には激しく個人攻撃をする

そんなトランプ的な行為全般について使える言葉を思いついた。
日本では、ある人物名の最後に「る」をつけて、
その人物的な行為を表す俗語として使ったりするけど、
この「トランプる」がいいと思ったのは、
「トランプる」を英語で「trumple」とした際の語感と、
その語感から思い浮かべる意味だ。

「trumple(トランプる)」そのものは僕の造語だけれど、
実は英語に「trample」という単語がある。
うちのアメリカ人の奥さんによると、
「trample」は「〈〜を〉どしどし踏みつぶす。〈〜を〉踏みつける。
〈人の感情などを〉踏みにじる」
という意味だから、
造語の「trumple(トランプる)」の意味に似ていて語感もいいとのこと。
「tr」のあとの「u」と「a」が違うだけだから、発音も近いわけだ。
このところ機会があれば積極的に使用している。

そんなトランプがアメリカ大統領に就任して2週間が過ぎた。
イスラム圏7か国出身者を入国禁止にした大統領令はじめ、
この間にあったことは日本でも盛んに報じられているようなので、
ここで細かく紹介するまでもないはず。

「就任式に集まった観衆が過去最高だった」(明らかなウソ)と強弁したり、
大統領選挙では「300万人の不法移民が不正投票した」
と何の根拠もなくいい張って調査を命じたり。
得票数でヒラリーに300万票近くの差をつけられて負けた事実が相当悔しいらしい。
支持率も40%ちょっとで、政権発足直後でありながら驚くほど低い。
いまさらながらこれでよく大統領になれたなと思ってしまう。
また、オーストラリアの首相との電話会談の際、
切れて電話を叩ききった事実などは、彼の本性がそのままでた感じだ。

大統領選挙のときから現在にいたるまで、
やはり一番気になるのがトランプの「ウソ」だ。
枚挙に暇がないとはまさに彼のウソのことで、
明らかなウソでも権力をかさに事実だと大声でがなりたてる。
当然ながら彼はウソを認めたりはせず、
逆にウソを指摘した方を「ウソつき」だと一方的に罵倒、
恫喝まがいの発言さえいとわない。
絶対子どもにはまねさせたくない態度だけど、
それを絶対的な権力を持つ大統領やその側近がしているんだから、
常識的に考えれば、いまのアメリカ政治(トランプ政治)は、
既に破綻しているといってもいいのかもしれない。

分かりやすい例が、ご存知トランプのメディア対応だ。
お仲間メディア(FOXニュースなど)には愛想よく、
自分に批判的だったり、都合の悪い事実を伝えるメディアにたいしては、
「インチキだ」「フェイクニュース(偽ニュース)だ」
とまくし立てて聞く耳を持たない。
CNNやニューヨークタイムス、
ワシントンポストなんかに対する敵愾心は尋常じゃない。





NYT本社
(photo:kazuhiko iimura)



そんなトランプに嫌われているニューヨークタイムスが先月、
「偽ニュース」をでっちあげたある人物に関する記事を載せた。

大統領選挙が終盤に差しかかった頃、
【オハイオ州で投票箱に入った大量の不正ヒラリー票が発見された】
というウソの記事を書いた男性についてだ。
この捏造記事は、当時またたくまに広がり、
トランプ本人も鬼の首でもとったように、
無思慮にその「偽ニュース」をツイートしてばんばん拡散させた。
“その後の顛末”まで仔細にフォローしていない人の中には、
今でもこの「偽ニュース」を本当にあったことだと信じている人が多いかもしれない。
「偽ニュース」をでっち上げて広げた動機についてその男性は、
ニューヨークタイムスの取材に「金のためにやった」と答えている。
そんな行為がいい金になるのがネット社会の負の側面なのだ。

さらにある時点でそれが偽ニュース、ウソ情報だと分かったとしても、
そこに書かれている内容が自分に都合よかったり、
自身の考えに近いものであったりすると、
「いいね」を押したり「シェア」したりする人も少なくないだろうし、
もしかすると、「そんなこともあるかもしれない」、「きっと本当なんだ」
と勝手に思い込むようになるのかもしれない。
特に自分の支持する権力者のものいいに迎合するような人たちは、
その傾向が強いんじゃないか?

その上にネットの世界では偽ニュースやウソ情報が、
削除や訂正されずにのそのまま残ってしまうことが多々ある。
試しに関心のあるテーマでそれなりに事実関係をつかんでいる事柄について、
幾つかキーワードを打ち込んで検索してみよう。
結構な数の事実誤認、ウソ情報、根拠のない噂話がでてくるはずだ。
でもそれがウソやインチキだと分かるのは、あなたがそのテーマに関して詳しいから。
そうでない人や物事の真偽についてあまり検討を加えたりしない人は、
そこに書かれている内容がウソか本当なのか、なかなか判断できないに違いない。

「偽ニュース」や「ウソ情報」は昔からあったものだけれど、
いま僕たちが直面しているそれはかなり厄介な代物なのだ。

トランプ政権を例にとれば、そんな偽ニュースやウソ情報を
トランプ本人はじめ、報道官ほか政府高官までがずる賢く悪用している訳だから驚く。

例えばトランプの顧問で、就任式に来た観衆の数について、
「もう一つの事実」という訳のわからない発言をして、
物議をかもしたケリーアン・コンウェー氏。
今度は米ケーブルテレビ局(MSNBC)の番組で、
実在しない「イラク人過激派による虐殺事件」について語り、また問題になった。
ご丁寧にも今回は、
「これまで報道されていないから多くの人は今まで知らなかったはず」
とまで言ってのけた。
問題を指摘されるた彼女は後にツイッターで釈明したが、
そんな彼女のツイッターをいったいどれだけの人が見るというのか。

影響の大きいメディアで自分たちに都合のいいウソの情報を流して、
間違いを指摘されたら個人のツイッターでしらっと訂正する。
けれども流された情報の絶対量は断然ウソ情報の方が勝り、
結果少なくない人がウソ情報を事実として受け止め続ける可能性が高くなる。

そもそもが「もう一つの事実」ってなんだ?
ふざけた話だけど、こうして一つの表現としてあちこちで見かけるようになると、
そんな訳の分からないものいいまでいったん立ち止まって考える必要がでてくる。
まったくもって嫌な現状だ。





反対集会アマースト大学
(トランプ大統領令反対集会 アマースト大学/ photo:kazuhiko iimura)





極めつけはトランプお得意の個人攻撃だ。
イスラム圏7か国出身者の入国を禁止した大統領令について、
その一時差し止めを命じたジェームズ・ロバート連邦地裁判事を攻撃。
「この、いわゆる判事の意見は本質的にわが国から法執行というものを奪うもので、
ばかげており、覆されるだろう!」
とツイッターに投稿したのだ。
法の精神(司法の独立)を疎んじているとしか思えないトランプに、
法執行云々を語る資格があるのか?

さらに6日には、「なにか起きたら判事のせいだ」とまでいい放った。
とても大統領の言葉とは思えない。
判事に対する個人攻撃は前代未聞で現職大統領としてはほとんど前例のないことらしい。
トランプは、大統領選挙期間中にも「トランプ大学」詐欺疑惑をめぐり、
訴訟を担当していた判事を「メキシコ人」と呼んで人種差別だと批判されたけど、
大統領に就任してもそのままな訳だ。

そんなアメリカ大統領トランプと日本の安倍首相の首脳会談が開かれる。
いったいどんな展開になるのだろう。
ニコニコ笑っていても、意に反することが持ち上がれば、
あっという間に豹変して激高するトランプ。
そんなトランプ個人やトランプ政権を見るいまの世界の眼は極めて厳しい。
にもかかわらず、きちんと言うべきことを言わないまま、
巷間伝わっているようにエアフォースワンに同乗してフロリダまで赴き、
一緒にゴルフまでしてしまうのか?

そんなお気楽な映像が世界中に発信されると思うと恥ずかしいし、
アメリカ人の多くはきっと“いったいどんな神経をしているんだろう”
と白い目で見るに違いない。
それよりなにより、
「トランプ大統領と安倍首相は同類だ」
とテロを企む連中は確信するだろう。

これからアメリカという国はどうなってしまうのか。
分断社会、モラル低下、もろもろの差別…。
ウソを言っても大声でまくし立てれば、
何でも通ってしまうような社会になってしまうのか?
(それが「強いアメリカ」なのか?)
うちの奥さんは、大統領選挙の結果を知ったあと体調を崩した。
ショックというよりも、
これからアメリカで生活していくことが「とっても怖い」からだと。
不安ではなく「恐怖」なのですね。
たぶん、トランプ的なものの考え方に対して嫌悪感を抱いている人の多くは、
うちの奥さんと似たような精神状態だと思う。

50年以上アメリカ人をやってきて、
この地にずっと住んでいる人間がひりひりと肌で感じる怖さ。
これから先何年か(そんなに?)その怖さを感じながらこの地で生活していくこと。
それは日本人の僕なんかには到底感じられない皮膚感覚で、
長いことアメリカに住んでいても、
決して分からない類のものなんだろうなあ…と思う。

こうしてトランプについてつらつら書いているとかなり重たい気分になる。
だからという訳じゃないけれど、
最後にかなり笑える「フェイク新聞」を紹介しよう。
約30年前、初めてニューヨークに住み始めた頃、
その並外れた馬鹿馬鹿しさがおかしくて購入していた、
「National Enquirer」なる新聞(?)だ。




タブロイド
(photo:kazuhiko iimura)



記事の内容はといえば、「その子は、お父さんにそっくりだった!」
として紹介されている「人面馬(?)」の記事だったり、
墜落したUFOから「宇宙人の赤ちゃんが“生きたまま”発見された」というもの。
さらには、407ポンド、つまり約185キログラムもある、
「世界一大きな赤ん坊」の話まで。
ともかく、
いったいどこからそんなアイディアが沸いてくるんだろうという代物ばかりだ。

この新聞(?)が、いま世界中で問題になっている「偽ニュース」とは、
まったく質の異なるものであることは明らかだけれど、
これがスーパーマーケットのレジ横なんかで堂々と販売されているんだから
少なからず驚いたもの。

でも、いまある「虚構」をウリにした「虚構ニュース」などと違って、
この「National Enquirer」は、
“内容は虚構です”とも“ジョークです”とも表明していないから、
なかには「偽ニュース」とは思わないで記事内容を信じる人もいるのか?
30年前は“ほぼ”そんなことはないだろうと考えていたけれど、
今だと、もしかするとこんな新聞(?)でさえ、
情報ソースとして利用している人がいるかも知れないと思えてしまうから怖い。
それだけ世の中がウソと偽ニュースに汚染されてしまっているということなのか?

(飯村和彦)




newyork01double at 14:03|PermalinkComments(0)

2016年09月02日

トランプが勝つ確率は13%!国民を侮った男の窮地



トランプが米大統領選で勝利する確率はわずか13%!

これはニューヨークタイムスの大統領選挙サイトの9月2日段階の予測だが、他の選挙予測サイトをみても勝利予測の数字ではヒラリーがトランプを圧倒している。アメリカ大統領選挙にあっては、9月初旬における戦況が11月の選挙結果を占う一つの目安になっているので、その意味では“いまの”トランプにはまったく勝ち目はないという予測だ。




87%ヒラリー勝利
(ニューヨークタイムス大統領選挙サイトより)




共和党大会で大統領候補として指名を受けた直後までは、ヒラリーと互角、もしくはトランプ若干リードの戦況だったにも係わらず、このひと月ほどでトランプの勢いは急速に衰えた。

流れが大きく変わったのは共和党大会の翌週に行われた7月下旬の民主党大会。
問題となったのは、イラク戦争で戦死したイスラム系の陸軍大尉の両親が、イスラム教徒の入国禁止を主張するトランプの政策を激しく非難したことに対する、トランプの反応だった。
「あなたは憲法を読んだことがあるのか」「何も犠牲を払っていないくせに…」という両親の非難に対してトランプは、「事業を起こし、雇用を生みだすなどして多大な犠牲を払ってきた」とテレビインタビューで反論。さらには壇上で発言しなかった母親に対し、「発言を禁じられていたのだろう」などと彼女を侮辱するかのような発言までした。

「英雄」として敬われるべき戦地で犠牲になった兵士やその遺族に対する批判は、党派を問わずタブー中のタブーだ。にも係わらずトランプはいつもの調子で減らず口を叩いたのだ。その結果、本来はトランプ支持に回るはずの退役軍人関係者はじめ、共和党の幹部やその支持者の多くが彼のもとから離れてしまった。
数々の暴言で注目を集め、それをエネルギーに変えて支持を集めるというトランプの手法がはっきりと裏目にでたのだ。アメリカ国民を侮った、軽率で致命的な失敗であり、トランプという人間の資質そのもの、在りようがそのままさらけだされた形だ。

そんなトランプの窮地にさらに追い討ちをかけたのが、本人は「起死回生の一手」として計画したに違いない今週8月31日のメキシコ訪問だろう。
「メキシコとの国境に巨大な壁を作る。費用は全部メキシコが負担!」と叫び続けているトランプのメキシコ訪問。普通なら何らかの妙案を秘めての行動だろうと誰もが考える。ましてやトランプ陣営は、メキシコ訪問の直後に「移民政策に関する主要な政策の発表」を行うと事前通告までいたのだからなおさらだ。
ところが結果はどうだった? トランプのその場しのぎのいい加減さがよりはっきりしただけだった。

メキシコのペニャニエト大統領との会談後の記者会見でトランプは、「壁の建設費用の負担については話し合わなかった」と述べた。ところがその直後に大統領が「会談のはじめに、メキシコは壁の建設費を払わないと明確に伝えた」とツイッターに書き込んだため、トランプの「うそ」があっさり露呈してしまったのだ。
「メキシコ国境に築く壁」は、不法移民の強制送還、イスラム教徒の入国禁止と並ぶトランプの(愚かな)移民政策の象徴だ。にもかかわらずその当事者間の話し合いの内容について、公式の記者会見で平気で嘘をつく。そんな男をアメリカ大統領にしたいといったいとれだけの人が考えるだろうか。国の安全保障政策の舵取りや「核のボタン」を押す資格を与えたいと思うだろうか。常識的に考えればありえない話だろう。

では、冒頭に紹介したニューヨークタイムスの勝者予測確率の通り、ヒラリーが圧倒的な大差をもってトランプを打ち負かしてしまうのか…といえばことはそう簡単じゃない。




43% 対 40%
(ニューヨークタイムス大統領選挙サイトより)




同じニューヨークタイムスの選挙予測サイトがだしている9月2日段階の支持率(全国)を見ると、「ヒラリー43%、トランプ40%」でわずか3ポイントの差でしかない。ほかの世論調査でもその差は概ね1%〜6%だから、現状では「ヒラリー優勢」とはいえ、とても磐石な状態にあるとはいえない。
このあたりがアメリカという国の難しいところなのだろう。
トランプ支持者(というか信奉者)が集会で「UAS! USA! USA!」と叫んでいるニュース映像を見るたびにげんなりしてしまうのだが、そうは思わない方々がまだ大勢いるということだ。

身近なところに目を転じてみると、我が家のあるマサチューセッツ州アマーストは住民のほとんどがリベラル層で、公立高校の卒業式で校長が堂々とトランプ批判をするような地域なのだが、当然ながらトランプ支持者もいる。一年を通してずっと星条旗が掲げられているような家は、その多くが共和党支持者のものとの予想がつくのだが、大統領選の今年は「make America great again TRUMP」のパネルがこれみよがしに貼ってあるから一目瞭然だ。
リベラルな風土の地域にあっても堂々と自分の主張を公にしているところは尊敬に値するし、それができるところが“アメリカらしい”といえなくもない。(この点、自分の主義主張をあまり表にださず、なにかあれば「匿名」でネットに…という人が多い日本とはだいぶ違う)。

しかし、いくら自由に自分の主義主張を表明できるとはいえ程度というものがある。
つい最近のことだがこんなことがあった。市内に向うバスに乗ると白人の中年女性が友人とおぼしき人物と政治談議をしていた。会話の内容からその中年女性がトランプ支持者であることはすぐに分かったのだか、ともかくその声が常識はずれに大きかった。たまらず一人の男性が注意すると彼女はこう言い放った。
「ここは中国のような共産主義の国じゃない。だからあなたに(私の)行動をコントロールされるいわれはない」
これにはあ然とした。そしてこんなタイプの人が「USA! USA! USA!」と叫んでいるんだなと妙に納得もした。果たしてその中年女性は中国の共産主義についてどれほど知っているのか…。





トランプ支持の家
(photo:kazuhiko iimura)




少し話が横道にそれたので、改めて大統領選の現況について。
ご存知のようにアメリカ大統領選は州ごとの勝ち負けで決まるから、民主・共和の支持率が拮抗している「激戦州」とされる州の勝敗が明暗を分ける。
今回の場合はアイオワやペンシルバニア、フロリダなどの12ほどの州が「激戦州」と位置づけられているので、それらの州の現状をまたニューヨークタイムスの分析(9月2日現在)をもとに見てみると以下のようになる。

ヒラリーが「5ポイント以上の差」をつけているのが、
バージニア(+10.6)、
ペンシルバニア(+8.4)、
ニューハンプシャー(+7.4)、
ミシガン(+6.8)、
ウィスコンシン(+5.3) の5つの州。

「1〜5ポイントの差」しかないのが、
フロリダ(+4.8)、
オハイオ(+4.3)、
ノースカロライナ(+3.1)、
アイオワ(+1.3)の4つの州。

逆にいまだにトランプがリードしているのが、
アリゾナ(+0.9)、
ジョージア(+1.1)、
ミズーリ(+7.2) の3つの州。

ただ、アイオワ州とアリゾナ州、ジョージア州はその差が1%ほどしかないので、ほぼ互角といっていいだろう。また、ノースカロライナ州の場合は、今回「激戦州」になっているけれど過去10回の大統領選挙で共和党が8勝している州だから、ここでトランプが負けるとその痛手は大きいはず。

となれば、いまの「ヒラリー優勢」の状況をトランプがひっくり返す可能性はどれぐらいあるのだろう。あまり考えたくはないが、たぶんそれはトランプの選挙戦の仕方云々よりも、ヒラリー側の今後の在り方により左右されるように思える。
つまり、ヒラリーがどれだけいまの自分の支持者を繋ぎとめておけるか…によるのだろう。もともと人気のないもの同士の闘いなのだから、その「人気のなさ具合」がそのまま今の「差」に表れているともいえる。

ワシントン・ポストが今週8月31日に発表した調査結果によると、ヒラリーを「好ましくない」思っている人は「56%」。一方のトランプは「63%」。つまり、トランプの方がより人気がない分、ヒラリーが優勢にたっているわけだ。
そのヒラリーにしても、7月下旬の民主党大会直後(「好ましくない:50%」)より、6ポイントも不人気度が増している。これには「クリントン財団」による大口献金者への便宜供与疑惑や、いまだにはっきりしていない国務長官時代の「メール不正使用問題」が影響しているといわれているので、ヒラリーにしても、とてもじゃないが安心していられないはず。

しかしここまで書いてきて思うのは、「それにしても醜悪な大統領選挙だなあ」ということ。
当初から予想されていたとはいえ、ここまで実のない選挙戦になるとは思ってもみなかった。間違いなく多くの人も同様の感想を持っているはずだ。
先に述べたように、稀に見る不人気者同士の闘いとはいえ、だからこそそれを補う建設的な議論やそれぞれの掲げる政策の「深化」があってもいいだろうと思うのだけれど、それがまったくない。TPP問題はどうなった? 東アジアの「核」の話はどうなった? 経済政策は? 実効性のある対テロ対策は?
なにもはっきりしないままアメリカは11月の大統領選挙当日を迎えるのだろうか。

(飯村和彦)


newyork01double at 19:53|PermalinkComments(0)

2016年06月30日

増え続ける無差別テロの脅威!沢木耕太郎さんが「深夜特急」で描いたような旅はもうできない。


この暗澹たる気分、言い知れぬ不安感をどう言葉で表現したらいいのか。

トルコ最大都市イスタンブールのアタチュルク国際空港で発生したテロでは、29日までに41人が死亡、239人が負傷した。つい2週間ほど前には、米国フロリダ州オーランドでIS(イスラム国)に忠誠を誓ったとされる男がナイトクラブを襲撃。銃を乱射し49人の命を奪ったし、3月にベルギーの首都ブリュッセルで発生した同時テロでは、32人が死亡。また昨年11月のパリ同時多発テロでは、レストラン、劇場、サッカー場などが襲撃され130人もの人が殺され、350人以上が負傷している。
さらに中東やアフリカに目を移せは、毎週のように何十人もの一般市民が無慈悲なテロの犠牲になっている。

世界は今いったいどうなっていて、これから先どうなっていくのか…。
幾つもの国境を越えて見知らぬ土地を訪れ、初めて出会う多種雑多な人や文化に触れる…もうそんな旅をすることはできないような気がする。実際、中東では現実的に不可能だろう。

イランやイラク、アフガニスタンに行ってみたい…と思ったのは学生の頃だ。沢木耕太郎さんの「深夜特急」を読んだ後のことだった。路線バスでごつごつした砂漠地帯を夜通し走り、明け方の市場でその土地特有の朝メシを食べる。世界史で学んだメソポタミア文明の地(現在のイラクの一部)であるユーフラテス・チグリス川流域を通り、そのままヨーロッパまで足をのばす。本を読みながら勝手にそんなことを想像していた。
約30年前、メディアの仕事についたのも少なからずそんな願望があったからだ。自分の目と耳で世界の国々に生きる人たちの生活を感じ、意見を聞く。そして、ものごとに対する多様な考え方に接してその意味を多くの人に伝えていく(…というかその努力をしていく)。そんな仕事だ。




北朝鮮国境
(北朝鮮と韓国の国境付近 photo: kazuhiko iimura)




北朝鮮と韓国の国境を目の当たりにしたときは、同一民族でありながらもどうしても折り合いをつけられない問題がそこに在ることを肌で感じたけれど、そんな状況にあっても韓国には、命がけで脱北者に暖かい支援の手を差し伸べている人たちがいた。

ハイチには、上等じゃないけれど綺麗に洗濯された白いシャツを着た少女たちが夜、街灯の下で頑張って勉強をしていた。貧しさに負けない強さだ。
モンゴルでは生活に使う水を買いに行くのは子どもの仕事。一日に一度、大きなタンクをのせた台車を押して給水所にやってくる。道はデコボコだった。




モンゴル2
(モンゴルの給水所 photo: kazuhiko iimura)




これまでに訪れたのは約20カ国。そのたびに痛感したことは「違い」のあることの当たり前さであり、その「違い」を認めることの大切さだ。人種や宗教、政治体制や気候、風土、国としての発展度や成熟度などによってそれぞれ異なるし、同じ一つの国の中でさえ、地域ごとに明らかな「違い」がある。当然ながら、その「違い」があることによっていいこともあれば悪いこともある。意見がぶつかり合って激しい論争になる。紛争もあれば悲劇も起こる。
でも「違い」がなければ「想像力」は喚起されないはず。個人的な考えでしかないけれど、人間が他の人々と共に生きていくうえで一番大切なものは「想像力」だと思う。だからその「想像力」を喚起させる「違い」がとっても重要になり、重要だからこそその「違い」をそれぞれが認め合う必要がある訳だ。積極的にだろうが消極的にだろうが、最終的にはあれこれある「違い」をそれぞれが尊重する。じゃないと世の中が壊れてしまうから。

で今まさに、「違い」を認めない「不寛容さ」ゆえに世界が壊れ始めている。

国民がEU離脱という選択をしたイギリスでは、若者たちが、「クソ移民!」「アフリカに帰れ!」と公衆の面前でアフリカ系男性に罵声を浴びせるという事件が発生、似たような人種差別主義者による犯罪も増えているという。悲しくて空しい現象だ。
また、ベルリンの壁が打ち壊されてから27年たった今、ヨーロッパの国々は難民・移民対策として国境警備を強化している。モロッコとスペインの飛び地セウタの国境、トルコとギリシャの国境、トルコとブルガリアの国境などには、高いフェンスと有刺鉄線が設置された。
まさに不寛容の象徴でしかない。
米国では共和党の大統領候補トランプが、「不法移民の強制送還」や、移民流入阻止のためにメキシコとの国境に「万里の長城」を築くと公約。失われた「大国のプライドと主権」を取り戻すべきだと訴え、少なくない支持を集めているのは周知の通り。

そして中東やヨーロッパ、米国で多発している無慈悲で残虐なテロ。
トルコの空港で発生したテロについては、いまのところどの組織からも犯行声明はだされていないが、当局はIS(イスラム国)による犯行の疑いが強いとみて、自爆した実行犯3人の特定とその背後関係の解明に全力を挙げているという。
けれども一番の問題はそこじゃない。
いま何が恐ろしいかといえば、世界中どこにでもIS(イスラム国)的なテロに及ぶ輩が存在し、増えていること。米軍の支援を受けたイラク軍の攻撃によりIS(イスラム国)支配地域はかつてよりはだいぶ縮小したというが、その分、彼らの主張に同調する他国にある組織や個人がより過激になっているように思えてならない。特に「個人」の場合は、どこの誰が「テロリスト」であるのか、テロが発生した後でないと分からないという現実が横たわる。

いつどこで自動小銃が乱射され、自爆テロが起きるか分からない。だから誰もがもう、傍観者じゃいられない。そんな現実を肝に銘じながら、まずは自分にいま何ができるのかを考えたい。

悲劇の現場を記憶に焼付け、テロの犠牲になった人たちを心から悼むこと。
空から降ってくるミサイルに怯える武器を持たない人たちの心境を想像すること。
子ども達には、「テロや武力では人の心を変えられない」という事実を伝えること。
そして「違い」を認め他者に寛容になること、またはその努力をすること…か。

(飯村和彦)




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2016年03月24日

ISとの対峙方法は?見えない敵との闘い方は?



ベルギー・ブリュッセルで発生したISによるテロを受けて、
アメリカ国内も厳重な警戒態勢が敷かれている。
ニューヨークやロサンゼルス等の空港や駅、繁華街では、
重火器で武装した大勢の警官が眼光鋭く、警戒に当たっている。
確かに、いたるところに武装した警官が存在することは、
「当局が安全確保に力を尽くしている」
という安心感を一般市民に与えるのかもしれない。
もちろん、「大変なことになっている」
という不安感を掻き立てられる人もいるだろうが、
どちらかといえば少しは安心するのだろう。

けれども、
テロ行為そのものを抑止する効果がどれだけあるのか…
との疑問もよぎる。
テロリストにしてみれば、
避けるべき対象(武装した警官等)がはっきりする分、
対抗手段を編み出しやすくなるのでは…と思ってしまう。
そもそも重火器そのもので、
テロリストによる自爆テロ(あるいは爆弾テロ)を抑えることができるのか?





厳戒態勢
(写真:CBSニュースサイトより)




以前取材したテロ対策の元責任者は、
「テロは防ぎようがない。
なぜならテロ行為の主導権を握っているのは、
いつだってテロリストの方だから」
と話していた。
意味するところは、
テロは起きてみないとその「時と場所」は分からないということだ。
稀に「事前にテロを防いだ」という発表がなされることはあるが、
しかしその反動は何倍にもなって帰ってくることが多い。
つまり“見えない敵”の先手を打って相手を見つけ、闘い、
圧するのはそれだけ難しいということだ。

であるならどうだろう、
相手が見えないのなら、こちらも見えない形で対峙してみては? 
マシンガンを携えた警官を大量に街に配備するのと同程度の規模で、
一般市民にしか見えない大勢の警官、
つまり私服警官を大勢配置してテロ警戒に当たらせる。

少なくとも「私服警官」の方が、
重武装した警官より、今まさにテロを実行しようとしているテロリストに対し、
より近くに「存在できる」可能性は高くなるだろう。
上手くいけば、
それとは知らずにそばに居合わせたテロリストを確保できるかもしれない。

しかしそうはいっても、
「私服警官」が辺りにたくさんいるという状況は、
普通に日常生活を送る一般市民にしてみれば居心地が悪いのも確か。
テロ対策とはいえ、
自分の気づかないところで監視されるのを快くは受け入れがたい。
昨今、街中に監視カメラが設置されていて、
四六時中見張られている現実もあるけれど。

もちろん、
「私服警官」の増員等の対策は既に取り入れているのかもしれない。
(ただ、その事実がテロ組織側に周知されていないと抑止効果は低くなる…)
さらには「素人の浅知恵。そんなに甘くない」ともいわれるだろうが、
少なくとも、、
街に重火器をもった警官が溢れる現状が最適だとは思えない。
狡猾な連中に正攻法は通じないだろうから。

拳が震えるほど悔しいが、
今ごろISの連中は、ほくそ笑んでいるに違いない。
パリに続き、ブリュッセルでも大規模テロを成功させたばかりか、
そのテロを受け、
世界中がまたも厳戒態勢に入って騒然としている訳だから。
マシンガンを抱えた多数の警官が、
ニューヨーク地下鉄の入り口に立つ光景をニュースで見ながら、
連中は「(今回も)目的達成…」と実感していることだろう。

ISの最終目的は、
自分たち(といってもほんの僅かな限られた人数らしい)以外の人間を
この世から排除することだという。
その手段が、
自分たち以外の人間同士、
国家間や勢力同士で殺し合いをさせることであり、
自分たちへの憎悪を増幅させ、
自分たちのもとにできるだけ多くの人間をおびき寄せ、
そこで殺戮を繰り返すこと。

例えば、
有志連合による空爆で一般市民の犠牲がでてもなんとも思わない。
誰であれ、最終的に「他の人間」は必要ないのだから。

したがって、
ISの思考の中には「話し合いでの解決」という項目はないのだという。
自分たち以外の存在を認めないわけだから、
ネゴシエーションの余地もない。

そんな連中に対峙していくのは容易なことじゃない。
心を開いて話したくても受け付けないだろうし、
力でねじ伏せるには、
こちら側の犠牲が多くなり過ぎる(既にかなりの犠牲がでている)。

「テロには屈しない」と声高に叫んでも、
連中にはまったく響かないだろうし。

じゃあどうすればいい?
わからない。
でも、わらないことをまず認めないと先へも進めない気がする。
酷く自分が無力に思えるけれど、諦めるわけにもいかない。
ただ、
童話にある「北風」のようにはならないように心がけたいと思う。
例え、「太陽」がまったく力を発揮できない相手だとしても…。

(飯村和彦)




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2014年10月26日

テロとの戦い。10年前といま、日本の姿勢は?



間違いなく、いま世界は深刻な事態に陥っている。
イラク、シリアで勢力を急拡大している「イスラム国」の存在。
そして、彼らの主張に同調する世界中の組織・個人。
特に後者にあっては、どこの誰が「テロリスト」であるのか、事が発生した後でないと分からないという現実が横たわる。
あるものは自らの信念から自爆テロを起こし、あるものは自らが今置かれている社会状況に憤怒しライフルや斧を手に暴挙に走る。

一方アメリカのオバマ大統領は、イスラム国への対応を巡り、22カ国の軍のトップをメリーランド州の空軍基地に集めて結束を呼び掛けた。会議に参加したのはイスラム国への空爆に参加しているフランスやイギリス、サウジアラビアなど。
この席でオバマ大統領は、「目標は、イスラム国が国際社会の脅威にならぬよう弱体化させ、最終的には破壊させることだ」と力説。イスラム国を壊滅するには、アメリカ単独ではなく「有志連合」の協力が不可欠という認識を示し、参加国も一致したという。

ここで登場した「有志連合」という言葉。
「有志」、つまり志の有るものたちの「連合」を意味するのだろうが、ではその「志(こころざし)」とはどんなものなのだろう。
さらに、このアメリカの呼びかけに日本は今後どのような姿勢で臨んでいくのだろうか。
安倍首相とその仲間たちが「選択」する「立ち位置」によって、これから先日本が向かいあっていくことになる「対イスラム国」「対テロ戦争」の様相が大きく変わってくる。

安倍首相の「選択」によって生じる「結果」。
その結果は私たち日本国民が受け入れられるものになるのか。もし受け入れがたい結果になった場合、安倍首相はどうのような「責任」の取り方をするのだろう。

と、ここまで考えて、ふとあることに気付いた。
約10年前にも似たようなことがあったなあ…と。
そこで当時の原稿を引っ張り出してみた。2004年2月に書いたものである。
内容は、小泉首相(当時)が、自衛隊のイラク派遣を決めたことに関する疑問だ。

考えを整理する意味もあり、改めて原文のまま掲載することにしました。
この10年間で、なにが変わりましたか?



星条旗たなびく?



…【以下、2004年2月3日、記】

『イラクへの陸上自衛隊の本隊派遣がいよいよ開始された。政治に翻弄された挙げ句の事実上の派兵。日の丸を背に迷彩服に身を包んだ隊員たちの胸中は複雑だろう。イラク国内が戦闘地域であるのは明白であり、そこに派遣されるということは、自らの命を失う危険性があると同時に他国人の命を奪う可能性もあるということを意味するからだ。
 しかし、先週の衆議院特別員会に於いて小泉首相は、自衛隊員に万が一のことが起きた場合、その『責任』をどうとるのかという民主党の前原誠司議員の質問に対し、「派遣された自衛隊員がその任務を果たせることを祈る」という内容の答弁を繰り返すだけで、不測の事態が発生した際の具体的な責任の取り方については一切口にしようとはしなかた。ときに薄笑いさえ浮かべながらのその答弁からは、日本の最高司令官としての決意は微塵も感じられなかった。

自衛隊のイラク派遣は小泉首相の判断であり、『選択』である。自分が行った選択の結果を引き受け、それに責任を持つのは当然のことである。この世に結果のでない選択など存在しない。にもかかわらず、小泉首相は頑なまでに責任の取り方を明確にしない。つまり、選択はしたがその結果については責任をとらないといっているのと同じである。
対テロ戦争は、どこに国境や前線があるのか、誰が敵なのかも曖昧な新しいタイプの戦いである。2年前、『9.11テロ』を検証する報道番組の取材で話を聞いた元FBI副長官のオリバー・レベル氏は、テロリストとの戦いの難しさについて「テロ決行の時間や場所などすべての状況をコントロールしているのはテロリストの方であり、特に自爆テロの場合は、実行犯が十分に訓練を積み、地域社会に潜り込み、時間をかけて計画を練り上げるので、その裏をかいてテロを未然に防ぐことは事実上不可能である」と語った。つまり、テロを防ぐための包括的な対策などは存在し得ないということだ。

自衛隊員が派遣されたイラクもまさにそのような状況であるということを、日本政府が正確に把握しきれていないであろうことは、国会での小泉首相や石破防衛庁長官による「サマワ答弁の混乱」を見ても明らかである。
さらには、イラクの大量破壊兵器問題を調査してきたデビット・ケイ前調査団長が、開戦時にイラクが同兵器を保有していた証拠はないと断言したことで、イラク戦争の大義にまで疑問符がついた現状を考えれば、自衛隊派遣の是非以前に、米英軍によるイラク戦争開戦を支持した小泉首相以下、政府の判断(選択)そのものが改めて問題になっているのである。「自衛隊が立派に任務を果たせるようにするのが私の責任だ」などと答弁している状況ではない。大義なき戦争を支持したかもしれないということの意味は、多くの罪のないイスラム教徒を大量に殺害した戦争、言い換えれば「テロに対する戦争」という名のもとに行われた“国際テロ”を支持したのと同じで、そこが問われているのだ。

ブッシュ大統領は「フセイン政権を打倒して世界はより安全になり、イラクの人々は自由になった」と述べているが、その彼の言葉がいかに空虚なものであるかは未だに戦闘状態が続くイラクやパレスチナの現状を見ればわかる。
小泉首相は日米同盟、国際協調はこれからの日本の平和と繁栄にもっとも大事だと力説するが、では彼のいうところの国際協調とはどんな国々との協調を意味するのだろうか?まさか米国とその同盟国だけを意味しているのではあるまい。これと似た疑問はブッシュ大統領や小泉首相が「テロに対する戦争」という言葉を口にする時にも沸いてくる。テロに屈してはならないというのは至極当然なことであるが、彼らのいうテロとは誰によるどんな相手に向けられたテロを指してのことなのか? 米国とその友好国に向けられるテロだけがテロだともいうのだろうか? 日本政府は米国が過去行ってきた多くの“テロ攻撃”に対してはどんな立場をとっているのか? 

我々はテロという犯罪そのものについて異なった視点から見つめる必要がある。国際司法裁判所が国際テロで有罪を宣告した唯一の国が米国であり(1986年)、米国だけが国際法の遵守を求める国連安全保障理事会の決議に拒否権を発動したという事実。これは1980年代にニカラグアが受けた米国による暴力的な攻撃(「力の非合法な行使」)に対する国際司法裁判所と国連の判断だった。ニカラグアではアメリカによるこの“テロ攻撃”で何万もの人が命を落とした。1998年にはスーダンの首都ハルツウムに米国は巡航ミサイルを撃ち込んだ。この爆撃でスーダンの主要な薬品の90%を製産していた製薬工場が破壊されたため、以降、今日に至るまで数万人もの命が失われていると報告されている。その多くが子供たちだという。彼らの家族にしてみれば米国こそがテロ国家なのである。サダム・フセインと米国が1980年代盟友関係にあったのは周知の事実だし、その当時サダム・フセインが毒ガスでクルド人を大量殺戮するという残忍なテロ行為を行ったのもまた事実である。
これら米国による数々の“テロ攻撃”の歴史については、マサチューセッツ工科大教授のノーム・チョムスキー氏の著書「9.11アメリカに報復する資格はない!」に詳しく述べてられているので是非参考にして頂きたいが、問題はこのような“テロ国家”としての米国の歴史を日本政府がどのように解釈した上で、その米国が掲げる「テロに対する戦争」に現在向き合っているのかが判然としないことである。

二日、宮崎県の高校三年生の女子生徒が内閣府に提出した、平和的な手段によるイラクの復興支援と自衛隊の撤退などを求めた小泉首相宛ての5358人分の署名つきの嘆願書に関連し、小泉首相は「この世の中、善意の人間だけで成り立っているわけじゃない」とした上で、学校の教師も生徒に「イラクの事情を説明して、自衛隊は平和的に貢献するのだ」ということを教えるべきだと語った。自衛隊派遣という重い選択をしたにも係わらず、その結果起こりうる出来事についてどんな責任をとるのか一切説明しない小泉首相に、学校の教師に対して自らの判断の正当性を生徒に説明させる資格があるだろうか。
「暴力の連鎖を断ち切るためには平和的な解決が必要だ」と考え、たった一人で5358人分もの署名を集めた女子生徒の方が、何が善で何が悪なのかをきちんと見極めている気がするし、彼女の考えに共鳴した多くの若者たちの方が小泉首相より自分の正義、うちなる倫理に忠実に生きるように思えてならない。

善か悪か…。その概念は、状況によって変化する例が一つでも見つかった瞬間に焦点を失うものだ。特に「戦争」や「テロ」においては視点をどこに置くかで善悪の見え方も違ってくる。今ほど注意深く物事を見つめる姿勢が重要な時はない』

(飯村和彦)


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2014年02月01日

ボストン爆弾テロ事件で「死刑」求刑へ!



1月30日。ホルダー米司法長官は、
去年4月に起きたボストン・マラソン爆弾テロ事件で、
4人を殺害し多数を負傷させたとして起訴された
ジョハル・ツァルナエフ被告(20)に対し、
「死刑」を求刑する方針を明らかにした。

下の写真にある銃弾の痕は、
ツァルナエフ兄弟と警察による銃撃戦の際にできたもの。
当時現場をまわり、自分の目で確認できただけでも、
似たような弾痕が、少なくとも数十はあった。




dannkonn

(↑↓photo:Kazuhiko Iimura)

ボストン爆破テロ関連写真




この場所で、
ツァルナエフ兄弟の兄タルメラン容疑者は警察に射殺され、
弟のジョハル被告は、
その兄の射殺体に逃走車両で乗り上げ、
さらに数メートル引きずった後、住宅街へ逃げ込み、
あのボートに潜伏したのだった。

参考までに、
銃撃戦の現場に残されたおびただしい数の弾痕のほとんどは、
警察が発砲した銃弾によってできたものだった。

二つの爆弾が炸裂したあの日、
そして、ジョハル容疑者が確保されたあの日、
いったい何があったのか?
裁判での判決にあたってはその詳細がより明らかにされるのだろうか。

実行犯ツァルナエフ兄弟は、
テロ組織の後ろ盾のないロンリー・ウルフだった。
彼らが“いとも簡単に…”テロ行為を実行しえた背景とはなんだろう。
さらに、
卑劣なテロの犠牲になった人たちとその家族。
彼らは今なにを思い、
どんな時間を過ごしているのだろうか。


(飯村和彦)


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2011年09月06日

再考9.11テロ・予見されていた悲劇の裏側



2001年9月11日
米国同時多発テロで犠牲になった人の数は2973人。

ある人は迫り来る死の恐怖と闘いながら、
そしてある人は、
悲鳴をあげる間もなく、
その命を落としていった。



メモリアルタワー
[photo:kazuhiko iimura]



あれから10年。
ニューヨークの現場では今、
「9.11メモリアル」
(=The National September 11 Memorial & Museum)の建設が進んでいる。
けれども、
この場所を訪れる多くの人は、
いまだに、
かつてそこに聳えていた“アメリカ経済の象徴”、
世界貿易センタービルの幻影を見ているに違いない。



機影
[photo:kazuhiko iimura]



2001年9月11日、晴天。
あの日…
悲劇は、以下のようにして幕を開けた

アメリカン航空11便が、
世界貿易センタービル北棟に急接近

午前8時45分
アメリカン航空11便、世界貿易センター「北棟に激突」

午前9時3分
ユナイテッド航空175便、「南棟に激突」

午前9時43分
アメリカン航空77便、「ペンタゴン(国防総省)激突」

午前10時00分
世界貿易センター「南棟が崩壊」

午前10時6分
ユナイテッド航空93便、「ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外に墜落」

午前10時29分
世界貿易センター「北棟が崩壊」



マンハッタン、縦位置、空撮
[photo:kazuhiko iimura]



あの同時多発テロの実像を求めるために、
時計の針を、
9.11テロ発生の約8ヵ月後、2002年5月頃に戻してみる。

悲劇を冷静に見つめ直す機運が高まりはじめたこの頃、
多くのアメリカ国民やメディア、議会の目が、
ある方向に向けられはじめた。


テロは本当に防げなかったのか?


多くの人の胸の中に沸いたこの疑念は、
次第に大きなうねりとなって、
ブッシュ政権(当時)に向けらるようになった。

ダイアン・ファインスタイン上院議員(当時)
「大きな疑問の一つは、アメリカ国内での諜報活動の問題です」

ヒラリー・クリントン上院議員(当時) 
「ブッシュ大統領は全ての疑問に答える必要はありませんが、
幾つかには必ず答えるべきです。
特に“テロの事前情報があった”ということを、
どうして私たちが、きょう、5月16まで知らされなかったのか」

そのどれもが、
ブッシュ政権は、テロ事前情報を持っていたにも係わらず、
9.11テロを阻止できなった。
その理由を明らかにせよ!
…というものだった。


真相はどこに?


ブッシュ政権に向けられたこの大きな疑問にたいして、
長年、テロ対策の現場で捜査活動、諜報活動にあたっていた、
FBI、CIAの元幹部たちはどう応えるのだろうか。


FBI元特別捜査官、スミス氏は…

「国内でテロが起きる可能性を示す警告は、全部すぐそこにあった」

では、
もしそうであるとすれば、
なぜ、悲劇を避けられなかったのか?

「事件を未然に防ぐために諜報活動をしますが、
それを嫌がるFBIの性格が、
致命的なミスを引き起こしたのです」
(FBI元特別捜査官、スミス氏)

長年にわたり、
アメリカにおけるテロ対策の指揮にたっていた
元CIAテロ対策本部長のカニストラロ氏は…

「一連のテロの最終的な狙いを見抜けなかった点では、
CIAも同罪です」


2002年に入り、
米国議会では、
テロ事前情報についての大規模な調査が開始されていた。

そのきっかけとなったのが、
「フェニックス・メモ」と呼ばれる捜査報告書。
2002年5月、
連邦議会の調査で、その存在が明らかになったものである。
(参考:ニューヨークタイムズ記事)

報告書を作成したのは、
FBIフェニックス支部のケネス・ウィリアム捜査官。
その内容は、9.11テロ発生の2ヶ月前、
つまり2001年7月の段階で、
ワシントンのFBI本部や
アルカイダの動きを追っていたニューヨークのテロ対策部門にも送られていた。

「報告書(フェニックス・メモ)」の内容について、
CIA元テロ対策本部長のカニストラロ氏は…

「ウィリアムFBI捜査官は報告書の中で、
フェニックス近郊のアリゾナ航空学校で訓練を受けている、
複数のアラブ人の身辺調査を行うべきだと提言しています」

その理由として、
イスラム教過激派と思われる複数の中東系男性が
アリゾナにある飛行学校に入学している事実を指摘。
彼らの追跡調査により、

ビンラディンの信奉者が、
パイロットなどの人員として
民間航空システムに侵入しようとしている」

と断定していた。

ところが…

そのアリゾナからの報告書「フェニックス・メモ」を、
ワシントンのFBI本部も、
ニューヨークのテロ対策部門もまったく無視し、信用しなかったのだ。
当然、
その情報がCIAやホワイトハウスに送られる事もなかった。

ダッシェル下院内総務(当時)  
「FBI本部がどうしてその情報を不要としたのか、まったく理解できない」

「フェニックス・メモ」が見過ごされていたという事実は、
テロの遺族たちに、
新たな苦しみを与えることとなった。


しかも、FBI本部の失態は、これ一つだけではなかった。


実は2001年8月、
ミネアポリスでも、
現場のFBI捜査官たちが、一部のテロ実行犯たちを追いつめていたのだ。

この事実は2002年5月、
FBIミネアポリス支部の女性捜査官、
ロウリー氏の告発によって明らかになった。

13ページに及ぶ告発書簡の中で、
ロウリー氏は、

「9月11日のテロ実行犯の一部を、
事前に摘発できた可能性をFBI本部が握り潰した」

と訴えている。

告発の内容は、
テロ計画に関与したとして、
9.11テロ直前に逮捕、起訴されたムサウイ被告をめぐるものだった。

ムサウイに関する通報に対応したミネアポリスの捜査官は、
“彼がテロリストである可能性がある”と、初動捜査の段階から確信していました」
(告発書簡より一部抜粋)

2001年8月15日(=同時多発テロ発生の約一月前)
FBIミネアポリス支部は、地元の飛行学校から、
「小型機の操縦も出来ないのに、
ボーイング747の水平飛行のみの訓練を要求する不審な男がいる」
との通報を受けた。

8月16日
移民局が入国管理法違反でムサウイを逮捕

その直後、FBIミネアポリス支部は、
テロ防止関連で、
ムサウイの所持品などについて捜索令状を取ろうしたが、
この申請をワシントンのFBI本部は却下したのだ。

この件に関して、
元CIAテロ対策本部長のカニストラロ氏は…

「これはムサウイのコンピューター通信と
電話の盗聴をするために必要な裁判所の許可の事ですが、
証拠不十分ということでFBI本部は、
この申請を却下したのです」

この時、ワシントンのFBI本部に提出された
ミネアポリスの捜査官のメモには、

「ムサウイは、
大型航空機を乗っ取って、世界貿易センタービルに突っ込むつもりだ!」

とまで書かれていたのだ。

以下に、
ロウリー氏の告発書簡の一部を紹介する、

「運が良ければ、
9月11日以前に、
飛行学校にいた一人以上のテロリストを発見できた可能性がありました。
テロを防げたかどうかは分かりませんが、
少なくとも…
9月11日の人命の損失を小さく抑えるチャンスはあった筈です」

だが、
これらのテロ事前情報が、
同時テロを防ぐために生かされる事はなかったのだ。

元FBI特別捜査官のスミス氏は…       

「ミネアポリスからFBI本部に届いた情報は驚くべき内容で、
通常のものとは全く違っていました。
しかし、
“分析に余計な時間をかけるな”…というのが
事件が発生してから行動を起こす事に慣れていた
FBIテロ対策本部の考え方だったのです。
つまり、
テロを未然に防ぐ努力が足らなかったのです。

さらに、
もう一つの要因があります。
これは捜査当局に共通する問題点で、
多分、日本の警察庁も同じ問題を抱えていると思います。

それは、
全国規模の捜査組織は、
どうしても大きな支部からの情報を優先してしまうのです。

つまりFBI本部では、
"ミネアポリスの現場の捜査官に何が分かるんだ!"
と感じていた部分があると思います。
テロ対策タスクフォースが設置されているニューヨーク支局や、
海外テロ関係の捜査経験が豊富な
ワシントンDCの捜査官から上がった情報ではなかったので、
"ミネアポリスやフェニックスで燻っているような素人に何が分かるんだ!"
という気持ちがFBI本部にはあったと思います」


それでは
ホワイトハウスやCIAの方はどうだったのか?



ホワイトハウス
[photo: noa iimura]



ブッシュ大統領は、
“同時テロに関する事前情報は一切なかった”
という立場を一貫して取っていた。
しかし、
これがウソだった事が連邦議会の調査で明らかになったのだ。
                    
2001年8月6日、ブッシュ大統領は、
「ビンラディンが、アメリカ国内でハイジャックを計画している」
との報告をCIAから受けていたのだ。

この件に関して、
ライス大統領補佐官(当時)は以下のように弁明した。


「アルカイダが飛行機を何機も乗っ取って、
それをミサイル代わりにして、
世界貿易センターやペンタゴンに突っ込むなんて、
だれも予想できなかったと思います。
大統領への報告は、従来型ハイジャックについてでした」


しかし、
もしそれが本当だとしたら、
“それこそ由々しき問題だ”と
元CIAテロ対策本部長のカニストラロ氏は憤る。

「彼女(ライス大補佐官)は間違っている。
9月11日のテロの前兆となる、
ハイジャックした民間航空機で建造物に突入するというテロ計画は、
以前、実際に計画されていたのだから」

CIAテロ対策センターの元上級分析官のベドリントン氏も…

「ボジンカ計画と呼ばれるテロ計画があった。
1995年に、この計画が発覚したのは、全くの偶然だったが…」


9.11テロの6年前の1995年
CIAやFBIは既に、
アルカイダ一派が、
航空機を使った自爆テロ計画を持っているという事実を掴んでいたのだ。


暗号名・ボジンカ
いったい、どんな計画だったのか?



航空機
[photo:kazuhiko iimura]



1995年2月、
一人の男がフィリピンからニューヨークへ空路、移送されてきた。
男の名はラムジ・ヨセフ (注:ラムジ・ユセフとも表記される)

ヨセフは、
マンハッタン上空から世界貿易センタービルを眺めながら、
FBI捜査官の問い掛けにこう答えた。

FBI捜査官:「見ろ、世界貿易センターはちゃんと立ってる」
ヨセフ:「もっと金と爆薬があったら倒すのは簡単だった」

実はこのラムジ・ヨセフこそが、
1995年のボジンカ計画の首謀者であり、
また、
その2年前の1993年に発生した、
最初の 世界貿易センタービル爆破事件 の犯人でもあった。


では、
問題のボジンカ計画とは、
どんなテロ計画だったのだろうか。
元CIAテロ対策本部長のカニストラロ氏は…

「ラムジ・ヨセフは、
フィリピンのアジトに仲間と一緒に潜伏し、
そこで極東に運行しているアメリカの民間機を含む、
数機の民間旅客機を同時爆破する計画でした。
少なくとも11機がターゲットになっていましたが、
もっと多かったという説もあります」

アジア、アメリカ間を飛ぶ
11機の旅客機を狙った同時爆破テロ。

しかもそのほとんどが、
9.11テロと同じように、
アメリカン航空やユナイテッド航空など、
アメリカの旅客機を狙ったものだった。

【9.11テロ取材ノートより】


手向けられた花1
[photo: noa iimura]


(飯村和彦)


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