パウロ・コエーリョ
2009年11月25日
この世に一人だけの人にあった瞬間とは?
誰もがその瞬間を体験しているはずなのに、
その時はそれとは気づかない。
ある人は、しばらく時が流れたあとに、
「ああ、あのときの感情、あの胸のときめきがそうだったのか…」
と回顧できるかもしれない。
それはそれで幸福なことなのだが、
やはり、その瞬間に「これだ!」と心に突きあがるものを感じられたら、
その後の人生も大きく変わってくるのだろう。
パウロ・コエーリョの「アルケミスト」
その中に、
大切な人に出会った瞬間の心の在りよう、
理屈ではない刹那的な実感、
打算のない崇高さが明快に記されている。
以下、「アルケミスト」より抜粋
その瞬間、少年は時間が止まったように感じた。
「大いなる魂」が彼の中から突きあけてきた。
彼女の黒い瞳を見つめ、
彼女のくちびるが笑おうか、黙っていようか迷っているのを見た時、
彼は世界中で話されていることばの最も重要な部分
――地球上のすべての人が心で理解できることば――を学んだのだ。
それは愛だった。
それは人類よりももっと古く、
砂漠よりももっと昔からあるものだった。
それは二人の人間の目が合った時にいつでも流れる力であり、
この井戸のそばの二人の間に流れる力だった。
彼女はニッコリほほ笑んだ。
そして、それは確実に前兆だった。
――彼が自分では気づかずに、一生の間待ちこがれていた前兆だった。
それは、羊や本やクリスタルや砂漠の静寂の中に、
彼が探し求めていたものだった。
それは純粋な「大いなることば」だった。
それは宇宙が無限の時を旅する理由を説明する必要がないのと同じように、
説明を要しないものであった。
少年がその瞬間感じたことは、
自分が、
一生のうちにただ一人だけ見つける女性の前にいるということだった。
そして、ひと言も交わさなくても、
彼女も同じことを認めたのだった。
世界の何よりもそれは確かだった。
(飯村和彦)
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