大統領選挙

2016年06月08日

ヒラリー大統領候補へ「この国の歴史で初めて」。今だからこそサンダースの叫びに耳を傾けたい



民主党の大統領候補は、”ほぼ間違いなく”ヒラリーで決まり。
「この国の歴史で初めて…」
ヒラリーは勝利宣言のスピーチでそういって微笑んだ。
でもそんな今だからこそサンダースの叫びに耳を傾けたくなる。




ヒラリーとサンダース
(CBSニュースより)



ニュージャーシー州での予備選の圧勝を受けて「勝利宣言」をしたヒラリーだが、カリフォルニア州予備選でも勝利するだろう(この原稿を書いている段階では10ポイント以上差をつけてヒラリーがリードしている)。
当初、接戦が伝えられていたカリフォルニア州だけれど、蓋を開けてみればヒラリーの圧勝に…といっても差し支えないだろう。やはり、きのう(6月6日)の全米メディアによる「ヒラリー指名獲得に必要な代議員数2383人を確保」との報道が大きかったに違いない。


さすがのサンダースもこのカリフォルニア州での結果を受けて終戦かと思いきや、冗談じゃないとばかりに最後まで闘うと宣言した。まるで「ドンキホーテ」のよう…といっては失礼かもしれないが、いまだに血気盛ん、意気軒昂だ。既に選挙スタッフ数を半減したというけれど、なんとか上手い具合に踏ん張って、彼の主張や提案を少しでも今後に反映させて欲しい…と彼の支持者も願っているのだろう。

「民主社会主義者」を自任し、格差是正を前面に掲げてヒラリーの前に立ちはだかったサンダース。当初の「泡沫候補」との評を覆してここまで大健闘した彼の戦いぶりは間違いなく賞賛に値する。
1%の金持ちだけが得をするいまの社会構造を徹底的に否定し、既存の「金のかかる政治」からの脱却を訴え続けたサンダースのメッセージは、まったくぶれなかった。「革命を起こすんだ!」という彼の叫びに、多くの学生や働けど賃金の上がらない人たちが共感したのもうなづけるというもの。


69歳の自称ミュージシャン、トンプソン(Scontz Thompson)さんもサンダースの熱狂的な支持者だった。彼から自分の曲のビデオクリップをつくってくれないかというメールが入ったのは今年4月。建設現場での仕事をやめ、いまはランドリー(洗濯屋)でパートタイムの仕事をしながら音楽活動をしている。彼の曲は、「1% Trickle Down Caste System Blues」。1%の金持ちだけが潤う格差社会を痛烈に批判した内容で、サンダースの応援歌だといった。歌詞は、毎月送られてくる請求書にのたうちまわり、銀行預金もなければ将来もない…というような内容で、自分たちの生活をそのまま歌にしたものだった。







トンプソンさんは、いまこの段階にいたってもまだサンダースを応援しつづけている。
「74歳とは思えないあのエネルギー。誠実な人柄。知性。世直し(政治改革)に挑む姿…。凄いと思う」。だから自分も最後まであきらめないのだといった。彼は、サンダースのいってることが一つでも実現することを願っているのだ。

いまさらという気がしないでもないが、サンダースの提案をおさらいしてみると…。彼は就任後100日間に実施する政策として、医療の国民皆保険、最低賃金の15ドルへの引き上げ、インフラ整備への投資拡大を挙げた。
また大学については、「全ての公立大学で授業料を免除する」として、そのための財源(7500億ドル)は金融取引に課す新税から拠出するとした。

この中から、分かりやすい例としてアメリカの大学の学費を見てみよう。高いとはいわれているが実際にはどれぐらい高いのかといえば、これが信じられないほど高い。総合大学の学費は私立で年額35,000ドルから50,000ドル。1ドル110円で換算すると日本円で年間385万円から550万円。つまり4年間で約2,000万円にもなる。州立(=公立)大学でも年間約25,000ドル(約275万円)だから、4年間で軽く1,000万円以上だ。これってどう考えても常軌を逸している。
アメリカには、各種の奨学金制度(返済しないでいいもの)があるけれど、学費が学費だからほとんどの学生が重〜い学生ローンに苦しんでいる。サンダースが打ち出した「公立大学の授業料免除」という提案が、あれほど熱狂的に学生に支持されたのはそんな現状があるからだ。
だが当然のようにサンダースの提案する政策には疑問の声があがった。

「確かに夢のような提案だけれど、本当に実現できるの?」

たぶんこの問いに象徴されるような、政策課題への向き合い方の違いが、ヒラリー支持派とサンダース支持派の違いだったように思う。「実現可能な改革案をだして、ものごとを先に進めることが大切」という実務型がヒラリー派で、「国民が動けば大きな夢も現実になる」という革新型がサンダース派だったように思う。
もちろん、一般的にいわれているようなヒラリー=主流派(体制派)、サンダース=進歩派という表現でもいいけれど、ともかくこの二人の間には思想や政策に大きな隔たりがあるのは事実だろう。




サンダース プレート
(photo:kazuhiko iimura)



しかしそうはいっても、いつまでもぐずぐずしているわけにはいかない。民主党の大統領候補になることが(十中八九)決まったヒラリーは、一刻も早くサンダースとの間にある深い溝を埋めなくてはいけない。そうしないと秋の本選でトランプに負けてしまうかもしれないから。そのためにヒラリーはなにをするのか、なにをすべきなのか。サンダースを副大統領候補するという選択は(多分)ないにしても、可能な限り彼の考えを尊重し、その提案なりを現実のものにする努力をするのでは?この期に及んでもサンダースが「闘う姿勢」を崩さない理由がそこにあるのは間違いないように思う。民主党の政策目標を提示する党の綱領に「サンダースの主張」を反映させる、そのために7月の党大会まで走る続けるのだろう。

(飯村和彦)




newyork01double at 19:17|PermalinkComments(0)

2016年05月06日

アメリカ大統領選・トランプの勢いは侮れない!



さて、アメリカ大統領選予備選のこと。

結局、共和党の候補はトランプに。共和党の主流派の多くも、いまのトランプの勢いに屈せざるを得なかったということ。インディアナ州の予備選以降、結構多くの共和党実力者がトランプになびいた。共和党の重鎮の一人、ジョン・マケイン上院議員もトランプ支持を表明した。ともかくまずは勝ち馬に乗れ!ということらしく、そこに主義主張なり定見があるわけじゃない。政治家特有の駆け引きだ。もし定見らしきものがあったとすれば、それは「クルーズは死ぬほど嫌い」という当初からの思いかもしれない。超右派で危険な原理主義者のクルーズよりは、素っ頓狂な大口たたきの実業家、トランプの方が組みやすし…とでも思ったのか。まあ、第三者から見ればどっちもどっちなのだろうが、もしトランプが大統領選の本選でヒラリーに勝つ、などということが起きた場合は、その影響は世界に及ぶ訳だから、のんきに構えてはいられない。
トランプの同盟国は米軍の駐留経を100%負担すべきだという主張やら移民対策、貿易協定のあり方…等々、彼が本気であるなら大変な話だ。



2S
(写真:bbcより)



それでは本選の行方はどうなるのか…ということだが、実はかなり「まずい」状況になっている。なにが「まずい」のかといえば、もしかすると本当にトランプが大統領になってしまうかもしれないから。
現段階の世論調査では、ヒラリーがトランプを5〜6ポイントほどリードしているようだが、その程度の数字はあっという間にひっくり返る。特に多くの米国民から嫌われている二人による闘い(これも珍しい話だ…)だから、ちょっとしたことで形勢は逆転する。
例えば現実にはまったく即していない無理筋の主張であっても、一人でも多くの米国民が単純に「おお、そうだそうだ!」となるような主張を大声で訴えれば、間違いなく瞬時に状況は一転するに違いない。

一般的な米国民にはほとんど興味のない事柄だが、話を分かりやすくする意味で日米同盟の例で説明すると、トランプの「米国が攻撃を受けても、日本は何もしなくていい。それはフェアじゃない。だから駐留費を全額負担しないなら、駐留米軍の撤退もあり得る。アメリカはもう世界の警察にはなれないし、それだけの金もないから…」なんていうもの言いは、「おお、そうだそうだ!」となりやすい。ここでヒラリーが、「在日米軍は日本防衛のためだけに存在するのではない。朝鮮半島、中国、南シナ海など、アジア太平洋の安定は米国の国益そのものだ」なんて力説したとしても、多くの米国民はそんなことには耳を貸さないし、多分きちんと理解しようとしないだろう。

経済政策にしても、一ドルでも多くアメリカが得するための方法はなにか…に話を収斂させるに違いない。つまり、国際安全保障政策にしても対外経済政策にしても、すべてをバランスシート上の損得話にしてしまう訳だ。これって単純でわかりやすいから。
そうはいってもこれまでの国際関係上の取り決めや約束事があるから、そう簡単にはいかないだろう…と思う人も多いはずだ。もちろんその通りで、トランプが大声でいっていることが簡単に現実になる訳じゃない。しかし…だ。トランプやヒラリーはいま実際に安全保障問題や経済政策の舵取りをしている訳じゃない。やっているのはあくまでも「選挙戦」でしかない。だからそこでの目標は、いかにして選挙で一人でも多くの米国民に「おお、そうだそうだ!」と思わせるかが重要で、その意味ではトランプのものいいは、今のアメリカ社会では実に有効に機能しているのだ。
質はまったく違うけれど民主党のサンダースが、「1%の金持ちだけが得をしている格差社会」を大きな問題として、その改革を進めるための「夢」を分かりやすく語って圧倒的に若い世代の支持を集めているのと似ていなくもない。そこに実効性がなくても多くの人がサンダースに票を入れている訳だから。

こう考えてくると、俄然トランプが有利に思えてくる。大きな流れで見れば、暴言でアピールして支持を得てきたトランプは、本選で少しだけ軌道修正すればヒラリー嫌いの浮動票を結構簡単に獲得できるように思える。
実際トランプは、早くも政策を軌道修正。法定最低賃金について昨年11月には「上げない」といっていたのに、最新のインタビューでは最低賃金引き上げを示唆。「私は大部分の共和党員とは違うんだ」と嘘ぶいている。

一方ヒラリーはといえば、本選に勝つために必要な共和党穏健派の票を取り込むために、現状よりさらに保守に傾倒する必要がある。これ、かなり大変なことで、下手をすると民主党左派(つまりサンダースを支持しているような人たち)の票をぐん〜と減らすことにも繋がりかねない。それでなくてもサンダースは、この期に及んでも「最後まで頑張る!」と意気軒昂な訳だから、予備選が終わったあと、本選に向けてすんなりと民主党がまとまるとは考えにくい。だからといってヒラリーが、サンダースを副大統領候補にするとも思えないし。
ただ、人気、実力ともに高いマサチューセッツ州選出の上院議員、エリザベス・ウォーレンを副大統領候補にする…というのは悪くないアイディアに思える。彼女の実力は折り紙つきだし、多分、ヒラリーより大統領にふさわしいぐらいの人物だから。彼女はサンダースと考え方が近い(けれども彼の支持を表明している訳ではない)から、その支持層もサンダースと重なる。当然ながらこの場合、民主党の正副大統領候補が女性ということになる訳だが…。

とにもかくにも今回のアメリカ大統領選挙は、「前例のない」もの、もしかすると不毛な議論や誹謗中傷が乱れ飛ぶ、最低のものになるかもしれない。

(飯村和彦)




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